松本社長によると、マーケットの期待値が特に高い活用事例は下記の写真にもあるように、①没入型トレーニング、②3Dコラボレーション(共創)、③顧客体験、④組み込みシステムだという。順に説明してもらおう。
デジタルツインが実現する四つの世界
①「没入型トレーニング」は、学習者が実際に体験しているかのような没入感のあるトレーニングのこと。バーチャル技術の研究・開発を行うイマクリエイトは、「ナップ溶接トレーニング」というコンテンツを開発。仮想空間で何度でも溶接を繰り返し、実践で使える技術を身に付けることができる。
溶接実習は実習場所の確保や鉄板・溶接棒といった消耗品の準備が必要。「ナップ溶接トレーニング」はVR(Virtual Reality)ゴーグルの中に広がる仮想空間が現場になるので、空いた時間に何度でも練習ができる
②「3Dコラボレーション」は、3Dの可視化により、主にユーザー間でのコミュニケーションを向上、BtoCでは顧客や関係者との円滑なコミュニケーションを促進する。川崎重工業の「ROBO CROSS」の例では、顧客がロボットを導入する際のシミュレーションを提供、導入までの期間短縮が期待される。
川崎重工業の「ROBO CROSS」。ロボットを初めて導入する顧客は、サイズ感や適切なレイアウト、運用状況がイメージしにくい。そこで導入現場を「ROBO CROSS」で3D再現。また稼働後はIoTで情報を集め、ロボットを監視できる
③「顧客体験」では、オンラインショッピングやEコマースにおいて、より良いブランドストーリーを伝える没入型のインタラクティブな体験を提供。顧客のロイヤリティーを高め、併せてコンバージョンも高めることができる。パリの高級皮革製品メーカーCamille Fournetは、SmartPixelsが提供する3D製品コンフィギュレーターを使った顧客体験を提供し、多くの顧客の獲得に成功した。
パリの高級皮革製品メーカーCamille Fournetが導入した腕時計用高級レザーベルト向けのリアルタイム3D製品コンフィギュレーター。顧客は腕時計用ベルトのリアルな3Dイメージ画像を、どの角度からも見ながら選ぶことができる
④「組み込みシステム」は、機械や装置などの特定の機能を実現するために組み込まれるコンピューターシステムの総称。産業用機器、ヘルスケア機器、家庭用機器といった制御を必要とする多くの製品に用いられており、「Unity」を使ったより高い表現力が期待されている。その中でも、特に注目されている車載組み込みHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)は、ドライバーと自動車の間で情報をやりとりするテクノロジー。マツダとはコックピットのGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)に関するパートナーシップを結んだ。数年内にマツダ車で快適なGUI体験ができるはずだ。
とりわけ車載組み込みHMIの開発分野での活用が進んでいる。高度なリアルタイム3Dエンジンを組み合わせることで、マップや情報と娯楽を組み合わせたインフォテインメントの格段の進化が期待されている *写真はイメージ