トランプ氏は中国からの輸入品全般に対する関税を引き上げると公約しており、税率は60%以上となる可能性もある。米国の次期通商代表部(USTR)代表は、中国製部品を使用した製品あるいは中国企業が製造した製品を第三国から輸入した場合、それに関税を課す構想を示唆している。
バイデン米政権は関税に加え、国家安全保障上の理由から先端半導体技術の新たな輸出規制も実施し、さらには対中投資規制も強化した。
欧州連合(EU)はより慎重だが、中国の貿易慣行に対して厳しい姿勢を取るようになり、米国に近づいている兆しがある。EUは昨年、中国製電気自動車(EV)に関税を課した。先週には、中国が自国市場で欧州の医療機器メーカーを不当に差別していると非難し、さらなる報復の可能性が高まった。
英国の貿易救済庁は昨年11月、数カ月にわたるダンピング(不当廉売)調査の後、中国製掘削機に83.5%の関税を課すよう勧告した。
中国は世界中で黒字
第1次トランプ政権とバイデン政権の関税および産業補助金は、特に半導体などの分野で米国の製造業投資を活性化させ、米企業が生産拠点の一部を国内に戻したり、他の友好国に移転したりするきっかけとなったとされている。
しかし一部のエコノミストは、米国主導の西側諸国が世界の製造業に占める割合を拡大し、中国に奪われたシェアを取り戻す上で、関税はそれほど役に立たないのではないかと疑問を呈している。
中国の2024年の対米財貿易黒字は3600億ドルで、トランプ氏が2018年1月に関税を課した時点の水準(ドル建て)を23%上回る。米国は輸入品のうち中国からの直接輸入の割合を減らしたが、電子機器・プラスチック・医薬品については依然として中国の工場に依存している。また現在では、中国製部品を使用してベトナムやメキシコなどの地域で製造された製品(多くの場合、中国系企業の工場で製造)を大量に輸入している。
中国の対EU黒字は2018年以降に2倍超となり、約2500億ドルに達している。他の地域、特に東南アジアに対する黒字も拡大している。
中国は2023年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。中国製品は現在、世界のアパレル輸出の3分の1超、電子機器輸出の約30%、機械輸出の22%を占める。太陽光パネルではこれが80%に達する。
中国は世界貿易における地位を強化するため、低利融資や補助金の形で製造業企業を支援し、各社が安値販売を続け、国外の競合企業を下回る価格で販売できるよう後押ししている。
EVや再生可能エネルギー設備などの新興分野における中国の卓越した専門知識と同様、人民元安も追い風となっている。
一方、中国の他国製品に対する需要は伸び悩む。その一因は、不動産バブルの崩壊を受けて景気が低迷し、鉄鉱石などのコモディティー(国際商品)需要が盛り上がらないことにある。また、中国が化学薬品から自動車まで、あらゆるものの外国サプライヤーを国内サプライヤーに置き換えているためでもある。
ムーディーズ・アナリティックスの東京在勤シニアエコノミスト、ステファン・アングリック氏は「中国はかつてドイツ車や日本製機械を大量に買っていた」と言う。だが、それは過去の話だ。現在、中国は世界最大の乗用車輸出国であり、国内の道路は比亜迪(BYD)や小鵬汽車(シャオペン)などの中国企業製EVであふれている。スターバックスは中国でラッキンコーヒーに負けつつある。アップルは中国でのスマートフォン販売で華為技術(ファーウェイ)に追い抜かれる恐れがある。
「今や何もかも中国製だ」とアングリック氏は言う。同氏によれば、中国以外の製造業部門が低迷しているのは、高いエネルギーコストなども一因だが、伝統的な製造業大国の製品に対する中国の需要が減少していることが大きい。「中国はもはやこれまでのように他国を必要としていない」




