発展途上国に押し寄せる安価な中国製品が、中国とグローバルサウス(新興・途上国)の緊張を高めている。このことは、米国との貿易摩擦がエスカレートする中で、他国と新たな協力関係を構築しようとする中国政府の計画に影を落としている。
ドナルド・トランプ次期米大統領は対中関税を大幅に引き上げる方針を明らかにしており、中国は過剰な工場生産物をインドネシアやパキスタン、ブラジルなどの途上国にもっと振り向けたいと望んでいる。
ところが、こうした国々の多くは反発している。中国からの安価な輸入品が自国の工場を圧迫し、雇用を奪い、国内製造業を育成する取り組みを阻害しているためだ。多くの貧困国は、経済発展を推進する最善の方法として製造業を拡大させることに期待をかけている。
中国への反感が高まっていることは、グローバルサウスのリーダーになるという目標の足かせになる恐れがある。米国に対抗する独自の協力関係を構築する手段として、中国は途上国の支持を集めようと努力してきた。
多くの途上国は目下、四半世紀前に米国の産業を破壊したのと同じような「チャイナ・ショック」に見舞われることを危惧している。エコノミストの推計によると、米国では1999年から2011年にかけて家具やおもちゃ、衣料品のメーカーが中国からの輸入品との競争に負け、200万人以上の雇用が失われた。
同様のパターンが、中国の貿易パートナーである発展途上国の一部で起きているようだ。タイの銀行キアットナキン・ファトラ・ファイナンシャル・グループ傘下のKKPリサーチによると、タイでは中国製品の流入が急増したため、2023年初めから24年1~3月期にかけて1700超の工場が閉鎖された。
新規工場の開設がこれらの閉鎖を埋め合わせるのに一役買っているが、「将来の見通しは一段と厳しくなる公算が大きい」という。
中国からの輸入に対抗するため、発展途上国は2022年初め以降、関税や反ダンピング(不当廉売)調査、反補助金調査など、中国製品を対象にした250近い通商上の防衛措置を講じている。自由貿易を支持するスイスの非営利団体(NPO)グローバル・トレード・アラートが明らかにした。