中国の習近平国家主席が金融業界への統制を強めている。一度に1人ずつというやり方で、だ。
中国は何十年もの間、欧米の金融部門から学ぼうとしてきた。それが今では、自国の経済発展を導いた国際経験豊富な金融専門家の多くを追放する一方で、共産党の指令実行や資本主義の行き過ぎの否定に熱心な新世代の忠実な官僚を登用している。
習政権下で追放された金融業界の大物には、中国大手企業の上場を支援してきたドイツ銀行の元実力者、中国大手資産運用会社の最長在任会長、1990年代から2000年代にかけて中国金融業界の発展に多大な役割を果たした複数のバンカーなどがいる。
大物の追放と並行して、中国の金融業界における市場志向を弱め、業界をより直接的に習氏の管理下に置くための措置も実施されている。
共産党は、銀行関係者の高額な報酬パッケージの抑制、政治学習会の強化、金融問題に関する意思決定の一元化に取り組んでいる。中国人民銀行(中央銀行)の総裁職はこの数十年、国際経験を持つテクノクラート(実務家)が務めてきたが、党内での地位は低下している。
多くの経済学者や銀行関係者は、この改革によって、中国の台頭を支えてきたアニマルスピリットが失われることを懸念している。金融専門家や規制当局者が、トラブルに巻き込まれかねない過ちを避けようとして保守的になるからだ。
中国はまた、複雑な金融リスクに直面している時期に、国際経験と専門知識を持つバンカーや規制当局者を失っている。これらのリスクには、数兆ドルに上る地方政府の簿外債務の処理や、銀行のバランスシートに蓄積された不良債権(不動産ローン)の消化などが含まれ、高度な監督が必要とされる。
習氏は、金融業界は自己利益に重点を置き過ぎだと考えている。銀行とその顧客の利益ではなく、共産党と国家のニーズに奉仕すべきとの立場だ。習氏の説明によると、その目標は経済発展の柱に対する党の支配を確立し、国家の復興という「中国の夢」に向けて政府によるリスク管理や効果的な資本の誘導を可能にすることにある。