持続可能性の問題

 多くのエコノミストは、中国の1兆ドルの貿易黒字は経済力の証しではなく、持続不可能な成長モデルがすでに問題を引き起こしている証拠だとみている。供給が需要を上回る中、中国の生産者物価は2年以上にわたって下落し、企業の利益率や雇用・所得を圧迫している。

 これにより中国は、1990年代初頭に株式・不動産バブルが崩壊し、数十年にわたって景気停滞に苦しんだ日本のような状況に陥るリスクがある。

 中国の当局者らは、消費を促すことで、これらの逆風に対処し、日本の轍(てつ)を踏まない考えを示している。アナリストの間では、中国経済の不均衡を是正し、より持続的な消費を生み出すには、抜本的な改革が必要だとの声が多い。しかし、これまでの取り組み(年金支給額の引き上げや自動車・家電の買い換え補助金制度の拡大など)は抜本的な改革とは言えない。

 拡大が続く中国の輸出に対しては、インドやインドネシア、パキスタンをはじめとする多くの新興国でも一段と厳しい目が向けられている。これらの国の当局者は、工業化を進めて自国経済をより豊かにする取り組みが、中国の製造業の圧倒的な強さによって脅かされていると懸念している。

 米国とカナダに加え、トルコやブラジルなどの国々も中国製鉄鋼への関税を引き上げている。

 しかし一部のエコノミストは、米国などの国々が製造業界における中国のシェア抑制を目指すなら、自国の支出習慣を改めるといった他の調整を行う必要があるかもしれないと考えている。

 米国では、政府の長年にわたる積極的な借り入れと国内貯蓄の不足が貿易赤字の拡大に寄与してきた。従って、中国の貿易黒字を減らすには、中国経済の大転換だけでなく、米国経済の大転換も必要となりそうだ。

 米財務省の元職員で、現在は米外交問題評議会のシニアフェローを務めるブラッド・セッツァー氏は「こうした黒字は今後も続く」とみる。「中国に対して徹底的に関税を課すだけでは、この問題は解決しない」

(The Wall Street Journal/Jason Douglas)

※この記事はWSJにて2025年1月20日 07:21 JSTに配信されたものです。

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