育業をきっかけに、チームワークがスムーズに
ここで、具体的に当事者の声を紹介しよう。24年8月に第1子が誕生し、約1カ月間の育業を経験した後藤悠太上級主任(
「妻の妊娠が分かったときから育業は絶対にしたいと思っていました。でも、少人数のチームだから1人が抜ける穴は大きい。正直、同僚への気兼ねはありました。だから『応援手当』が導入されると聞いたときは本当にありがたくて、こちらも前向きに引き継ぐことができました」
引き継ぎ先となった渡辺雅夫主任も「引き継ぎを受ける側としても、応援手当の制度があったおかげで『これは自分の仕事だ』とすんなり納得することができましたね」と大きくうなずく。

しかし、いくら手当をもらえるといっても、1人で2人分の仕事をこなすのは物理的に困難だ。そこで、事前の引き継ぎによって業務の効率化をかなり丁寧に行ったという。
「半年前から資料を作り始めて、ミーティングでもたびたび業務の進捗を共有していきました。ありがたかったのは、上司が調整役として双方の業務を棚卸ししてくれたこと。3人で相談しながら、『育業明けまで保留できる仕事』と『絶対に継続しなくてはいけない仕事』に振り分け、後者はさらに効率化する方法を探りました。おかげで、実際に引き継ぐ業務はかなり減らすことができました」(後藤上級主任)
2人は同じ商品グループに属しているが、それまで担当業務は別々で、基本的に互いの仕事を詳しく把握していなかったという。それが、この引き継ぎを通じて互いの業務に対する解像度は大きく上がった。
「育業をきっかけに自分の仕事を文書化、マニュアル化できたことで、結果的に組織として必要な知識・スキル・ノウハウが見える化されて、自分にとってもチームにとってもメリットが大きかったと思います」と後藤上級主任は振り返る。
これを受けて渡辺主任が「あ、後藤さんはこんなことをやってたんだ、という発見が多くて、リスペクトが増しました。おかげで、復帰後も何かと助け合える関係になれたと思います」と言えば、「つい先日も子どものことで休んだけど、すごくスムーズにフォローしてもらったよね」と後藤上級主任が返す。まさに「相棒」といった雰囲気だ。