「仕事と家庭の両立」の鍵は育業にあり!

第2回:もっと子どもが幸せな社会へ。男性育業100%を達成したタカラトミーの大胆な人事改革社員の家族を職場に招いて、楽しく触れ合う夏のイベント「タカラトミーグループ ファミリーデー」の様子

タカラトミーでは「応援手当」を広い意味での「両立支援」に位置付けており、育業だけでなく介護、あるいは不妊治療のための事由にも適用できるようになっている。

「メンバー個人の問題を、チームで乗り越えられる──。そんな強い組織をつくるのが人事部門最大のミッションですから」と中村部長は話す。先ほどの育業当事者の事例を見ても、まさに目的通りの成果が上がっているといえるのではないだろうか。

同社でこれらの制度が導入された背景には、この5年間でダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)を全社の経営課題に位置付けて、経営、人事、各事業部門が連携しながら対話を重ねてきたという蓄積がある。起点となったのが20年に「女性管理職比率の低さ」を課題視したことから発足した「女性活躍推進プロジェクト」だ。その後、本質的な課題を特定するために、全ての女性社員と面談し、一人一人の声を丁寧に拾い上げていったのだという。

翌21年度には、中期経営計画の中にサステナビリティ・CSRの取り組みが掲げられ、目標・KPI(重要業績評価指標)を実行・推進するための「ダイバーシティタスクフォース」が発足。各事業部の若手や管理職も加わって、多様性の高いチームが構成された。ここでさらに深い議論を重ね、「男性育業100%」や「女性管理職比率20%」を達成するために必要な取り組みが明確になっていった。ちなみに、前述の通り、男性育業100%はすでに達成しており、女性管理職比率も21年に9%台だったものが、15.9%(24年4月時点)に。そこからさらに比率が伸びており 、着実に目標に近づいている。

具体的な制度の整備とともに、同社が力を入れてきたのが、コミュニケーションや情報提供などのソフト面だ。というのも、サーベイやアンケートで社員の声を丁寧に聞いていくと、「育業や時短勤務をすると、評価や昇進に影響があるのではないか」という不安の声が少なくなかったからだ。

第2回:もっと子どもが幸せな社会へ。男性育業100%を達成したタカラトミーの大胆な人事改革人事部門最大のミッションは「メンバー個人の問題を、チームで乗り越えられる組織をつくること」と話す中村部長

「せっかく良い制度を導入しても、運用がうまくいかなければ両立支援は進みません。制度を活用するための心理的なハードルを下げるには、評価や報酬にまつわる情報を透明化することも大事なので、積極的に開示を進めています。また、育業や時短制度などの申請を受けたときは、評価や報酬の仕組みまで踏み込んで丁寧に説明しています」(中村部長)

育業を経験した男性社員の声も社内のイントラネットなどを通じてたびたび発信し、まだ育業を経験していない社員のマインドチェンジも促している。タカラトミーのような子どもに関わる企業ならなおさら育業という体験の価値は大きく、感想のほとんどはポジティブなものだ。例えば、先ほど登場してくれた後藤上級主任はこう話す。

「育業して良かったと心から思っています。育児にゼロから関わったことで、夫婦で同じスタートラインに立てたし、1カ月間で育児のさまざまな面を経験できました。今は妻がメインで育児を担ってくれていますが、自分もいつでも代われる、分担できるという安心感が、これから長く仕事と家庭を両立していく上での自信につながっています。それに、子どもとたっぷり触れ合って、おもちゃを開発する仕事にますます愛着が湧くようになりました」

家庭と仕事をつなぐ好循環が生まれたこの事例が示すように、育業という体験には、個人のライフ・ワーク・バランスを超え、ビジネスや社会を変えていく可能性があるといえるのではないだろうか。

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こどもスマイルムーブメント事務局
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第2回:もっと子どもが幸せな社会へ。男性育業100%を達成したタカラトミーの大胆な人事改革