Looopが目指す「エネルギーフリー社会」
Looopの創業は11年4月。東日本大震災の翌月だ。きっかけは、創業者の中村創一郎取締役ファウンダーが、被災地にボランティアとして出向いたことだ。被災地では広範囲で停電が起きていた。中村氏は電気が止まっている避難所に独立型の太陽光発電セットを設置し、明かりをともし、携帯電話の充電ができるようにした。このときに再エネの可能性、エネルギーの重要性を実感したという。
そして、12年のFIT(再エネで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する固定価格買取制度)施行後、程なくしてLooopは「再エネ事業に本格的に参入した」と森田社長は語る。
![もっと身近に、もっと自由にーー再生可能エネルギーの普及に懸ける、Looopの新たな挑戦~電力小売りの料金プランを春からリニューアル](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/9/0/650/img_90ff2d2da304375778ee606db5e8f2ce70721.jpg)
「最近では太陽光発電所、風力発電所に加え、系統用蓄電池(電力系統に接続した大規模な蓄電池)事業にも進出しています」
16年4月、電力の小売り事業が全面自由化された。それまでは家庭や商店向けの電気は、各地域の電力会社が供給し、料金は法律で定められた方法により決まっていたが、自由化後は全ての利用者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。
「そのタイミングで電力小売り事業に参入しました」。それが「Looopでんき」だ。25年1月時点で契約は約34万件となり、独立系の新電力会社*¹では、電力需要実績第1位(低圧)*²という。
再エネ事業に関しては発電所を運営する発電事業の他、設計・調達・建設や保守管理とさまざまな業態があり、2500カ所以上の太陽光発電所の事業に携わっている。
「当社は、電気を『つくる』『コントロールする』『届ける』の全プロセスを自社で推進している強みがあります」
Looopは、「エネルギーフリー社会の実現」に向けた再エネの普及に努めているが、まだまだ課題は多い。
「FITにより太陽光発電所や風力発電所が増えた一方で、再エネがフル活用されていない現状があります。導入量は政策の後押しもあって伸びているのですが、再エネを使いたい、導入したいといった『ニーズ』が十分に高まっていない状況です。その理由は、大きく三つあります」
一つ目が、技術的な課題。
太陽光発電所の発電時間が日中に集中するため、需要以上に発電した電気を捨てる「出力抑制」が発生していることだ。
「既存の電力システムを改革し、技術的な課題をクリアしなければ、再エネをフル活用することができないのです。23年度の出力抑制は、全国で計約18億9000万kWh。これは、一般家庭約45万世帯の1年間の使用量に匹敵します」
45万世帯分、およそ香川県の全世帯*³を1年間賄える電気を捨てているわけだ。
二つ目は、導入・発電コスト。
日本での太陽光発電所をはじめとする再エネ発電所の建設コストは安くなってきているが、まだ諸外国に比べると相対的に高い状態だ。「中東のような日照条件が良い場所では、1kWh当たりの発電コストが0.1ドルと、ほとんど0に近い。再エネのコスト競争力において日本は相対的に弱く、発電コストを下げていく必要があります」。
三つ目が、社会受容性。
「本来、再エネは脱炭素につながる重要な電源であり、多くの方がその必要性は認識しているものの、居住地域に発電所が新設されることについては環境(水質や地盤、景観など)への影響を懸念されるケースもあります」
森田社長は、「技術的課題、コスト、社会受容性の三つの課題を解決していかなければ、再エネを使いたいとか、もっと導入したいというニーズが高まってこないと思います。われわれは三つの課題をいろいろな企業と協力して解決していきたいと考えています」と語る。
そして、同社が再生可能エネルギーの普及に向けて取り組む、出力抑制に対する解決策の一つがLooopでんきの市場連動型料金プラン「スマートタイムONE」だ。
*1 子会社、関連会社または関係会社ではない形で設立された新電力事業者
*2 電力需要実績(経済産業省資源エネルギー庁「電力調査統計<電力需要実績>低圧合計」/2024年7月~12月公表実績より)
*3 厚生労働省「人口動態調査」(2024年)