公平性・透明性をより高めて、新たな料金プランに改定

 なぜ、「スマートタイムONE」が再生可能エネルギーの普及や出力抑制の解決策となるのか。小川朋之 電力本部本部長は、次のように説明する。

「『スマートタイムONE』の料金は、市場価格に連動して30分ごとに変動する料金単価を採用しています。太陽光由来の発電量が多い昼間の時間帯の市場価格(JEPX/日本卸電力取引所の価格)は、0.01円/kWhなど限りなく0円に近くなることがあります。市場価格が安い時間帯に電気を使うよう利用者の皆さまに働き掛けたり、高い時間帯で使っていた電気をシフトさせたりすることで、電気代を削減でき、出力抑制が発生する昼間の時間帯の電気を有効に活用することができるようになるわけです。日常的に電気代を安くする取り組みを行う『スマートタイムONE』の利用者を増やしていくことで、出力抑制が起こりにくい環境をつくり出していけると考えています」

もっと身近に、もっと自由にーー再生可能エネルギーの普及に懸ける、Looopの新たな挑戦~電力小売りの料金プランを春からリニューアルLooop 小川朋之(おがわ・ともゆき)執行役員 電力本部 本部長

「スマートタイムONE」の利用者は、事務所や商店、飲食店のような法人もいるが、一般家庭が最も多い。例えば一般家庭で消費電力が多いエアコン。「スマートタイムONE」を使うと、夏場の暑くなる昼間の時間帯に強めにかけて室内を十分に冷やし、夜は設定温度を上げて消費電力を減らすことで電気料金を節約できる。冬場も同じで、昼間に十分に室内を暖めておく他、洗濯機や乾燥機、食洗機のような使う時間に制約があまりない家電は、昼間の安い時間帯に稼働するようにセットしておけばいい。この手法は電気を使う時間帯をずらすという意味で「ピークシフト」と呼ばれている。電車のオフピーク通勤のようなイメージだ。

 電気料金が安い時間帯を探して使うのは面倒に思えるかもしれないが、スマートフォンの「Looopでんき公式モバイルアプリ」を使うと、安い時間帯・高い時間帯が一目で分かる「でんき予報」や今月の電気代予測といった機能が利用できるため、アクションにつなげやすくなっている。このアプリは23年度グッドデザイン賞を受賞し、利用者から高評価が寄せられる優れモノだ。複数の家電をスマートフォンアプリからコントロールするスマートリモコンと連携することで、出先からエアコンの操作ができるなど、ピークシフトを簡易にする機能改善も随時行われている。

 そして4月1日、「スマートタイムONE」は公平性・透明性を向上させるため、さらに進化する。言葉だけで料金構造を説明することは難しいので、図解と合わせて見てほしい。

 現在の「スマートタイムONE(電灯)」の料金体系は、契約電力にかかる基本料金は0円。使用電力量にかかる料金は、電源料金(30分ごとに変わる市場連動の料金単価)+サービス料+国の制度対応費で構成されている。制度対応費の内訳は、送配電網の利用料金である「託送費」と24年4月より導入された「容量拠出金相当額(小売り電気事業者が発電事業者に支払う費用)」+「再生可能エネルギー発電促進賦課金」となる。電源料金、サービス利用料に加え制度対応費も全て単価換算して使用電力量に応じて課金している。そのため、利用者には制度対応費の負担内訳が見えにくかったともいえる。

 新しい「スマートタイムONE(電灯)」の料金体系は、契約電力に対応する制度対応費を切り出すことで、利用者が納得しやすい構造に改めた。制度対応費の内訳は、月次の契約電力に応じて課金される「託送基本料金(原価)+容量拠出金相当額(原価)」と、使用電力量に応じて課金される「託送従量料金(原価)+再生可能エネルギー発電促進賦課金」となる。電源料金+サービス料の構造はこれまでと同様に使用電力量に応じて課金される仕組みとなっている。

新たな料金体系の仕組み

 今回のプランリニューアルで「意識したことは三つある」と森田社長は語る。

「1点目が公平性、2点目が透明性、3点目が未来に向けた創造性です」

 公平性とは、先に説明した「制度対応費」の負担方法の変更のことだ。これまでのプランは使用電力量が多いほど制度対応費の負担も大きくなっていた。この不公平を是正し、利用者が等しく制度対応費を負担することにしたのだ。そのため、使用量が多い利用者にとっては全体の電気料金は値下がりになる。一部で使用量が少ない利用者は値上がりになるケースが出てくるが、不均衡だった部分が改められたと捉えるべきだろう。

 また、使用電力量にのみ対応する料金体系(従量料金での課金)は、一見シンプルに感じられる一方で、制度対応費を“無理やり”従量料金に転嫁していたため、利用者にとって不透明さがあった。そこで原価側と売価側の制度対応費の負担を同じ構造にすることで、サービス価格の透明性を高めた。

 未来に向けた創造性とは、顧客体験をより良くしていくため付加価値を創造する活動を指す。料金プランの公平性・透明性が高まり、使用電力量に対応した単価が安くなるメリットが付加されることで、利用者の拡大が期待できる。顧客サービスを向上させる投資がしやすくなるため、利益はユーザーに還元されることになる。

 Looopは、冒頭で触れたような再エネを活用する将来像を見越した新たな事業を計画している。

「今後、これまでわれわれが考えていた電気のニーズよりもはるかに多様なニーズが生まれてくると考えています。そうした多様なニーズに対して、電気だけではなく、電気をためる蓄電池、あるいは家電と直接連携するプロダクトやサービス、もっと言えば家を丸ごとプロデュースして最適化された生活ができるビジネスを手掛けたい。電気というインフラは、その可能性があると思います」

「再エネのニーズを引き起こしていく」未来は、「スマートタイムONE」のユーザー拡大を通じて実現する。つまりLooopのビジョンである「エネルギーフリー社会の実現」につながる一歩が、リニューアルした「スマートタイムONE」といえそうだ。

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