毎年多くの新規事業を立ち上げる戦略的な意図とは

 DYMが展開する事業は実に多彩だ。事業別の収益で見ると、企業のマーケティングやプロモーションを支援するWEB事業、人材コンサルティングで採用活動をサポートする人材事業が上位となる。加えて、医療事業やM&A・投資育成事業、不動産事業なども展開。さらには毎年多くの事業を新たに立ち上げている(図1)。

 水谷社長は「単一事業にこだわらず、複数の事業を行うことを美徳と考えています」と話すが、その真意は持続性の確保にあるようだ。

「どんな不況や環境の変化があっても会社が継続できるよう、最大限の努力をしています。『ベンチャーは攻めるだけ』と思われがちですが、DYMは1000年後も存続する会社でありたいのです。だから、『絶対につぶれない戦いをする』をテーマにしています」

「絶対につぶれない」ために、常時アンテナを張り巡らせてビジネストレンドをキャッチし、新規事業に反映する。トライ・アンド・エラーを高速で繰り返すことで、既存の事業だけに頼らない真のビジネス力が組織全体に搭載されるというわけだ。

 しかも、やみくもに利益だけを追求するわけではないことは、「世界で一番社会を変える会社を創る」というパーパスが示している。水谷社長はこう続ける。

「医師を目指していた私がビジネスの世界に飛び込んだのは、医学部在学中に大学附属病院などの医療現場で学んでいたとき、IT化の遅れを肌で感じたからです。医療業界の課題をITで解決したいと考え、DYMを立ち上げて世の中を広く見られるようになると、多くの社会課題があることに気付きました。一度きりの人生ですから、無駄にすることなく、事業を通して社会に貢献したい。せっかくならばその世界一を目指したいのです」

 利益を確保しながら社会に貢献する。この難題をクリアするため、徹底していることの一つが市場の選定だ。前述のように、M&A(企業の合併・買収)や不動産といった成長市場をきっちりと見極めて展開している。

「戦う市場を正しく選ぶことは、非常に重要です。成熟市場や衰退市場でも戦い方はあるのでしょうが、私たちのような若い会社には向いていません。成長市場でポジションを確保し、業績向上の戦略を練るからこそ勝ち筋が見えてくると思っています」

あえて未上場を貫く理由と「失敗を許容する」文化

 DYMが実際に幾つもの勝ち筋を見いだしてきたことは、売上高の推移に表れている。直近5期では売上高を約3倍に伸ばした(図2)。急成長の理由を水谷社長はこう分析する。

「やはり、人だと思います。特に、若い人材は企業にとって重要なエネルギーですから、かなり早い段階から新卒採用に注力してきました。人材を採用し、育成するということが、企業の成長において最も重要であると考えています」

 そこまで採用・育成に力を注ぐだけに、研修やプログラムだけでなく、パフォーマンスを引き出す組織風土の醸成にも気を配る。注目は「失敗を許容する」文化を着実に創り上げていることだ。

「人は、基本的に失敗から成長します。今持っている能力で、簡単に処理できる仕事をしても成長しないのは、そこに失敗経験が伴わないからです。だから私たちは、失敗を許容し、挑戦を後押しします」