原因は、システム構築を情報システム部門のSE任せにしているからだ。彼らが現場にヒアリングして、その結果をもとにシステム設計する。しかし、SEは現場の業務知識を持っていないし、現場の人間は情報システムのことを知らない。お互いに話が通じていないまま、実態把握がなされ要件定義・設計・プログラム製造へとフェーズが進む。
そしてテスト段階になって「こんなシステムじゃダメだ」と現場からクレームがつき、使い勝手の悪さやヌケ・モレがこの段階でわかり、手戻りが発生する。その結果、ユーザー部門と情報システム部門への相互の信頼は失われて、意思疎通がますます悪くなってしまう。
システムの刷新を成功に導くためにも、業務の実態を正確に把握するツールをエンドユーザー側で持つ必要性が出てきている。
エンドユーザーが持つべき、業務プロセス可視化法とは?
マネジャーのマネジメント能力向上と、業務に合ったITシステムの構築、これらの問題をまとめて解決する方法がある。業務を「可視化」すること、つまり業務プロセスを誰もが目で見てわかる状態にすることだ。その具体的な技法・ツールが、システム科学が開発した業務プロセス可視化法(以下HIT法)だ。
HIT法では、オフィスで行われる各業務を単位業務と単位作業の原単位に分解して、チャートや図、数値などの目に見えるかたちにする。原単位とは例えば、総務担当者なら「契約書の立案」、人事担当者なら「異動に関する通達の発信」、営業担当者なら「作成した企画書の修正」など単位業務としてチャート化し、単位作業(記号)を分・秒単位で工数が把握される。
業務を目に見えるかたちにすれば、「誰が」「何を」「どれくらい時間をかけて」仕事をしているかがわかり、業務量を把握し、業務の振れ幅を平準化するタイムマネジメントの基盤として使えるようになる。
業務プロセスを洗い出す作業を行うのは、現場の各担当者だ。各担当者の業務はチャートに表され、前後のつながりも明らかになる。そうすることで、「ここは業務の重複がある」「このムダな業務を削減できる」「紙のハードコピーを電子データで処理できる」といった改善案が浮かび上がってくる。HIT法にはそうした業務改善提案を作成するためのフォーマットも用意されている。