もちろん、ヤマ勘とはいっても、まったく根拠がなかったわけではない。広告をかけたのは、会社として注力している商品や、SNSで“バズった”商品。反応も良かったのだ。
「当時は、SNSでバズった商品などを中心に、すでに売れている商品に広告をかけるという手法を続けていたため、確かにそれらの商品はすごく売れたのですが、その半面、広告をかけていない商品が日の目を見ない状態になっていました。結果、広告をかけていた人気商品が売り切れてしまった際に、代わりの商品がお客さまの目になかなか触れず、せっかくお客さまのニーズがあるのに機会損失だけが膨らんでしまうという状態でした。」(伊藤 健チーフマネジャー)

【挑戦2】
「消費者の視点」で全ての商品が提案できる仕組みへ
お客さまが欲しいと思ったときに、その商品がない。そして、3000以上もの商品ラインアップを取りそろえているのに、その中から代わりの商品を選んでもらえる仕組みができていない。この二つの課題を解決するにはどうしたらいいのか――。
試行錯誤を重ねた結果、和平フレイズのAmazonチームは、視点を切り替える必要があることに気付く。
「それまでは、自分たちが売りたいものに広告をかけていたのです。でも、失敗を繰り返すうちに、『そのやり方ではうまくいかないのでは』とチームの一人一人が思うようになりました。考え方を変えなければいけないと意識するようになって、お客さまの視点に立つことの大切さに気付いたのです。お客さまがどのようにオンラインストアを見ているのか、どうやって欲しいものを探しているのかを意識するようになり、戦略的な広告運用へと切り替えていきました」(伊藤チーフマネジャー)
まずは、商品カタログに掲載の商品名ではなく、消費者が探しやすいアイテム名に変えたり、鍋の大きさを「cm」だけでなく「何人用」などイメージしやすい表現を加えたりすることからスタート。より検索にヒットしやすい状況を整備しつつ、商品をフライパンや鍋などカテゴリーに分け、それぞれに広告の予算配分や配信のルールを定めていった。
「フライパンの1番人気が売り切れて欠品になったら、育成商品の中からスムーズに代替の商品をご提案できる仕組みにしました。また、同じ商品カテゴリーの中でも『主力商品』と『育成商品』に分けて、状況に応じてそれぞれの広告予算を調整するようにしました」(梨本マネジャー)

商品をカテゴリー分けしたことで、同じ商品カテゴリーの中で欠品が起きたとしても、すぐ他の商品をお客さまが見つけられるようになった。また、運用結果を分析しやすくなり、PDCAを高速で回せるようになった。在庫状況を踏まえつつ、限られた予算内で豊富な商品ラインアップを消費者へ提案できるようになったため、消費者にとっては、和平フレイズの豊富な商品とのタッチポイントが増加した。それは結果にも反映され、売り上げは毎年着実に伸びていった。
「2019年にAmazon Japan最優秀ベストパートナー賞を、2020年にはAmazon Japanベストプラクティス賞セール部門を受賞しました。これには、それまでオンラインストアへの期待があまり感じられなかった社内からも驚きの声が上がりました。このときは、これまでの取り組みが全社で認められた実感があり、チームメンバーにとって大きな自信になりました」(中野部長)
【挑戦3】
Amazon限定ロゴ作成の決断。指名検索率が大幅アップ
確かな手応えをつかんだAmazonチームだったが、成長フェーズへと上がったことで新たな課題に突き当たる。
「登録した商品に対するタッチポイントは増やせたのですが、他社製品と横並びで見られることが多くなってきました。『和平フレイズ』というブランドではなく、フライパンという製品としてしか見られていないということが分かってきたのです」(伊藤チーフマネジャー)
例えば、同じサイズのフライパンだったら金額の安い方がブランドに関係なく選ばれる、といった具合だ。商品に対する評価は高いものの、いまひとつリピーターが少ないという事実もあった。
Amazonにおける和平フレイズ商品の閲覧数も、購入数も年々増加していた。しかし、その商品が「和平フレイズの商品」であることが認知されていなかったのだ。この状況を打破して高付加価値商品を販売できるブランドとなるためにも、ブランド認知度の向上を目指さなくてはいけない。チームで考え抜いた末に決断した次の一手が、新たなブランドロゴの制作だった。