CxO体制を導入するうえで
重要な4つのポイント
2025年3月に都内で開催されたビジネスラウンドテーブル「組織と人の変革を促す『リーダーシップチーム』のあり方」(主催:ダイヤモンドクォータリー、協賛:日本総研)では、大企業のトップマネジメント層が集まり「どのようにリーダーシップを編成するのか」「次世代のリーダーシップチームをどのようにつくっていくか」というテーマで白熱した議論を展開しました。
山田さんも参加されたこのディスカッションでは、経営会議などリーダーシップチームの形骸化が指摘されました。執行役員とCxOの役割や権限が明確でないケースも見受けられます。
CxOと執行役員は二者択一ではありません。むしろ執行役員の一部がCxOに就任するのが自然です。CxOと事業部ヘッド、それぞれに執行役員がいるのです。
CxO体制導入における重要なポイントは4つあります。
第1に、CEOを核としたリーダーシップチームの再編成です。経営アジェンダに基づき、CEOが必要とするCxOでメンバー構成を判断し、オープンに議論・意思決定できる会議体をつくること。第2は、CxOの役割・権限・責任を明確に定義すること。既存の役割分担を見直し、自社のビジネスモデルに即して必要に応じて組み替える。たとえば、CSOとCFOをどう役割分担するかを考えることなどです。第3は、CxOをサポートする組織・機能の再編成です。特にCFOにおけるFP&A(Financial Plan-ning & Analysis)やCHROにおけるHRBP(HRビジネスパートナー)などの配置が重要になります。最後に、CxOの職務遂行に必要な人材要件の明確化と確保・育成です。タスク指向からマネジメント指向の人材へ、専門知識とマネジメント知識を兼ね備える人材の確保・育成が必要になります。
CxO体制は単なる名称変更ではなく、グローバル経営に耐えうる組織・機能を意識した体制の構築が必要です。また、事業と機能のマトリックス組織において、どのように意思決定プロセスを設計するかも重要なポイントになります。
リーダーシップチームに求められる人材とは、どのようなものでしょうか。
まず、専門性だけでなく経営全般を理解する素養が必要です。たとえば、CFOの場合、経理財務の実務家が必ずしも適しているわけではありません。ある企業のCFOは「経営戦略や事業戦略から学ぶ人間のほうがフィットすることもある」と話していました。
次に、担当領域を超えた「領空侵犯」ができる勇気と見識が必要です。自分の専門領域だけでなく、他の領域についても積極的に意見を述べ、建設的な議論ができることが求められます。
そして、コンフリクトマネジメント能力も重要です。異なる意見をぶつけ合い、そこから最適解を導き出すプロセスに慣れていることが必要です。日本企業の「和を重んじる」文化は大切ですが、企業価値向上のためには時として健全な対立も必要なのです。
日本企業で領空侵犯、コンフリクトを定着させるための具体的なステップは何でしょうか。
重要なのは、自由闊達に物が言えるための信頼関係をどうつくるかです。気がついた人間はどんどん発言する、特にリーダーシップチームの人間はためらってはいけません。CEOが会議の冒頭で、領空侵犯とコンフリクトを積極的に起こすよう、しっかりと宣言すべきですね。
発言に対してのアクションや、どの意見を採用するのかは、CEOがすべて責任を取る。発言した人の責任にはせず、発言者の心理的な安全性を担保する。発言内容を議事録に書かない、というのも一つの手かもしれないですし、言ったことをどう受け止めるのかは、CEOがすべて判断する。
議論を活発化するためには、各々の人、各々の仕事についての経緯やその苦しさを理解していきながら、なおかつ相手のことを尊重し、傾聴したうえで言うべきことを言うことです。意見を出しにくい組織は、上層部が何も言わないので下も上へ倣えになっているはずです。今後は管理職も含め、社内全体で対話する機会を増やしていくべきです。