テクノロジーに対して
常に「中立」な視点を持つ
あずさ監査法人のデジタルアドバイザリーの強みは何でしょうか。
島田:我々の強みの源泉は、監査のDXに大きく投資してきたことです。それがファクトに基づく意思決定支援につながっています。現在の監査は、企業のシステムから大量のデータを取得し、それを分析する手法へと進化しています。企業経営者にとっても目指すべき方向は同じで、ありとあらゆるデータをリアルタイムで取得し、ファクトに基づく意思決定を行う必要があります。
たとえば1兆円企業でも、売上データをドリルダウンしていくと、数百円、数千円単位の個々の商品の売上明細にたどり着きます。データを大きくとらえるか、細かく見るか。そのフォーカスや解像度を自由自在に動かし、マクロとミクロ両方の視点からファクトをとらえるのがデータドリブン経営の本質です。我々は監査のDXを通じて獲得してきたそのケイパビリティを、企業のDX支援において存分に活かしています。すなわち、「データセントリックなコンサルティング」です。
我々のデジタルアドバイザリーは、データ分析能力、監査で培った知見、そしてハイブリッド型組織という強みを活かし、CIO/CDO(最高デジタル責任者)アジェンダを全方位でサポートします。
宇宿:別の角度から補足すると、我々は「インサイトの提供」と言っていますが、データを次のアクションにつなげられることも強みです。そのためには、データを細かく分解して理解する狭義の「分析」も重要ですが、それ以上に大事なのは、分解したものを「統合」するフェーズです。分析(分解)と統合を行き来しながらインサイトを導き出し、さらに「ストーリー」を構築していくこと。それが次のアクションにつながります。
DXを成功させるため、経営者にはどんな視点や姿勢が必要ですか。
木村:テクノロジーの可能性と限界をよく見極め、テクノロジーに対して過大な期待を抱かず、かといって敬遠もせず、「ニュートラルな視点」を持ち続けることです。そして、テクノロジーの進化のベクトルを見据えて、スピーディに仮説・実行・検証を続ける。そうすることで、変化し続ける事業環境、技術の変化を冷静に判断し、臨機応変に適応することが可能になります。
島田:テクノロジーの進化は非常に速く、いまできないことが1年後にはできるようになるかもしれません。このような変化に追随するためには、どんどんトライしていくアジャイルな企業姿勢が重要です。失敗が多いほど成功の数も増えます。だからこそ、経営者は失敗に対して感情的にならず、常にニュートラルでいるべきだと思います。
宇宿:ニュートラルでいるためには、足元ではなく「遠くを見る」視座が大切です。自分の立場を超え、組織全体としての行く先、経営課題といった大きな視点でとらえれば、物事の「本質」が見えてきます。
木村:経営者は、テクノロジーに関するさまざまな提案や「誘惑」に直面します。往々にして、そうした提案はテクノロジーやその未来について過度な期待を抱かせてしまうことがあります。
一方、我々はテクノロジーやプロダクトに対しては常に「中立」です。したがって、経営者がニュートラルな視点でDXに取り組むことを真に支援できるのは、監査法人のアドバイザリーとしての大きな強みだと自負しています。
◉企画・制作|ダイヤモンドクォータリー編集部
◉構成・まとめ|田原 寛 ◉撮影|福岡諒嗣(GEKKO)