住宅という大きな買い物の「買い時」を見極めるには、何が大事だろうか。まず、結婚、出産、入学など人生の節目が思い浮かぶ。それに併せて「有利な条件」で買えるタイミングを逃さないことも重要だ。消費税増税の前で、金利が上昇し始めた現在は、有利な条件でカードが切れるギリギリのチャンスとみられている。「適期」の判断材料を、税理士・公認会計士の青木寿幸氏に聞いた。
住宅購入を考えているなら
消費増税前の“今”が一つのタイミング
金利や住宅価格の動向、家計状況など、さまざまな要素が絡む住宅の“買い時”。消費税の増税時期をにらみながら考えると、今が一つのターニング・ポイントといえる。
増税後は住宅の原価も
大幅にアップする?
いよいよ来年に迫った消費税増税。現在5%の税率が2014年4月には8%、15年10月には10%へと段階的に引き上げられていく予定だ。
不動産の場合、消費税は土地にはかからず、建物だけにかかる。それでも価格の高いものだけに、税率が3%上がるだけでも大打撃だ(表1参照)。
しかも、実際には来春以降、3%増税を上回る影響が予想されるという。
「住宅を売る側からすれば、建築コストや土地を買うときの手数料などにかかる消費税もすべて3%上がることになります。住宅の価格そのものを上げなければ、増税前と同じ利益率を達成することができません」(税理士・公認会計士の青木寿幸氏)
青木寿幸(あおき・としゆき)
上智大学経済学部在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、アーサー・アンダーセン会計事務所、モルガン・スタンレー証券会社、本郷会計事務所を経て、2002年、日本中央会計事務所および日本中央税理士法人を設立し代表に就任。08年、相続税申告会を設立。『相続のミカタ』(中経出版)、『会計天国』(PHP研究所)など著書多数。
東日本大震災以降、職人や資材が被災地復興に注ぎ込まれ、全国的に建設コストは上がっていた。しかし、住宅市場の動きが鈍かった間は価格転嫁がしづらく、住宅価格にはほとんど反映されてこなかったのが実情だ。
今年に入り、市況が活発化したところで、膨らんだ建設コストについても適切に価格に反映させたいというのが、デベロッパーや住宅メーカーの本音だろう。実際には、「3%プラスアルファ」の値上げが起こると考えておいたほうがいい。
さらに、5月・6月とメガバンクが固定型住宅ローンの金利引き上げを発表。最低水準の金利が続いた住宅ローンについても上昇の動きが見えてきた。
「金利の低い今のうちに固定型で組んでしまうというのは一つの手ですが、全額を固定にするかどうかは、意見の分かれるところ。変動型はまだ0.8%前後と低い水準にあるので、固定と変動のミックスにするという選択もあります」
今後の金利動向も気になるところだが、青木氏は「急激には上がらない」と見ている。
「あまり急激に金利が上がれば国の借金返済が苦しくなり、国債も暴落して銀行破綻など深刻な事態が起こります。そうならないよう、日銀は国債を買って金利を抑えるはず。金利は緩やかに上昇するとしても、今後10年くらいは、変動型で2%を超えることはないのでは」
住宅ローンは借入額が大きく返済期間も長いため、金利が1%上がれば総支払額では百万円単位の差がつく。住宅購入に際しては金利の情報をよく吟味し、後悔のない選択をしたい。