KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「実行関税率は1-3月期に13%をやや上回る水準でピークを迎える可能性が高く、これは昨年4月2日時点の水準のほぼ半分だが、それでも1年前の水準の4倍以上だ」としながらも、「最悪の事態にはならなかった」と述べた。

 高所得世帯の支出は株式市場の高いバリュエーションに支えられた。昨年の米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げと低失業率の継続を考えると、この傾向は26年も続くと予想される。

 エコノミストの見通しが明るくなったもう一つの理由は、大型減税・歳出法による減税で、今春の還付金が増え、個人消費を押し上げるはずだからだ。また、19の州が今月から最低賃金を引き上げており、これも低所得世帯にとってさらなる追い風となる。

 昨年、経済の中で唯一低調だった分野は雇用市場だった。月間雇用者数の伸びは平均4万9000人で、24年の16万8000人から減少。失業率は25年12月に4.4%となり、1年前の4.1%から上昇した。原因は、コスト意識の高い企業が関税の不確実性により新規採用に慎重になり、AIを活用して生産性を高めたことだ。さらに移民取り締まりと退職が労働者供給を減少させた。

 今後の見通しについて、エコノミストらは雇用の最悪期は過ぎたと考えている。25年末に4.4%だった失業率は26年には4.5%前後で推移すると予想。また、今後4四半期の月間雇用者数の伸び予想を前回調査の4万9000人から6万5000人に引き上げた。これは、昨年後半のFRBの利下げが一因で、不動産業界などの雇用を支え、住宅購入を促進するはずだ。

 FRBは直近3回の会合で政策金利を引き下げ、最近では昨年12月に3年ぶりの低水準となる3.5~3.75%に設定した。エコノミストらは、FRBが今年6月までに0.25ポイントの利下げを1回行い、下半期にもう1回実施して、フェデラルファンド(FF)金利の中間値を3%前後にすると引き続き予想している。

 ジェローム・パウエル氏のFRB議長としての任期は5月に終了し、トランプ氏は大幅な利下げを行う人物を次期議長に指名する意向を示している。一部のエコノミストは、パウエル氏の後任が就任した後、利下げペースが加速すると予想している。

 INGのチーフインターナショナルエコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「労働市場の弱さ、(インフレの)継続的な下振れサプライズ、ややハト派的なFRB指導部を考えると、リスクは今年の追加利下げに傾いている」と述べた。

 もう一つのサプライズは、25年12月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.7%上昇だったことだ。これは、関税がピークに達した昨年4月に予想されていた3.6%を大きく下回る。

 インフレ率は26年末までにさらに2.6%に低下すると予想される。FRBが重視する別のインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率は、26年末までに2.5%に鈍化すると見込まれている。エコノミストらはインフレ圧力が徐々に後退するとみており、27年末のPCEインフレ率を2.3%と予測しているが、依然としてFRBの目標である2%を上回る。

 インフレ率が鈍化する理由の一つは、関税の寄与度が小さくなることだ。関税は今年、両方のインフレ指標を0.2ポイント押し上げると予想されており、これは昨年10月の調査で推定された25年のPCEインフレ率への寄与度(0.5ポイント)を下回る。

 原油価格もインフレ率低下の一因だ。現在1バレル=約59ドルで取引されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は、6月には57.15ドルに下落し、年末には58.88ドルになると予想されている。米国によるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の追放は重要な要因とは見なされていない。回答者の約70%が、マドゥロ氏追放は原油価格の変動にほとんど寄与しないとみている。 

 エコノミストらは今後12カ月間の景気後退確率を27%と見積もっており、これは1年ぶりの低水準だ。見通しに対するリスクには、FRBの独立性を巡る争い、インフレに対する関税の潜在的影響、低・中所得世帯の財政を圧迫する雇用の伸び鈍化などがある。

 調査回答によると、トランプ関税の合法性に関する最高裁判所の差し迫った判決も、経済見通しの不確実性を高めている。

 ナロフ・エコノミクスのジョエル・ナロフ社長は「トランプ関税が合法と判断されれば、企業は値上げを余儀なくされ、FRBは利下げを停止せざるを得なくなる。関税が違法と判断されれば、景気後退リスクは低下する」と述べた。

 エコノミック・アウトルック・グループのチーフグローバルエコノミスト、バーナード・バウムオール氏は「経済の成長は、AIとデータセンターへの巨額投資に支えられた株価上昇の恩恵を受けた所得上位20%の消費者によってけん引されている。今のところ問題ないが、経済は株式価値の急落に対して極めてぜい弱な状態にある」と指摘した。

(The Wall Street Journal/Harriet Torry and Anthony DeBarros)

※この記事はWSJにて2026年1月19日 12:26 JSTに配信されたものです。

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