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政治と債務は、水と油のような関係だ。事態がいかに厳しくなり得るかを、米国人は大西洋の対岸を参考に理解するとよいだろう。
英国政府は年次予算でこの問題を実証した。英国は三つの板挟み、つまり貸し手(市場)と有権者を満足させながら、経済にとって正しい政策を行うことができない「トリレンマ」に陥っている。何かを諦める必要がある。そこで26日、増税を盛り込んだ予算案を発表した。政府は経済成長を目指す約束を無視し、債券市場と自らの政治基盤を優先することにした。
フランスも同じトリレンマを抱えており、問題はさらに深刻だ。英国より政府債務は高水準で、財政赤字は大きい。増税が政治的に実行不可能なだけでなく、すでに税率は非常に高く、これ以上引き上げれば自滅を招きかねない。
フランスでは歳出削減が英国以上に困難だ。英国では福祉分野の削減が政治的な火種になると分かっているが、分断の進むフランス議会では予算の確保自体が課題となっている。少なくとも英国では、超短命に終わったリズ・トラス政権下の債券パニックが、政治家は貸し手に注意を払うべきだとの教訓を残した。
米国でもすでに同じ問題の一部が顕在化している。しかも問題悪化を防ぐ手だてを打つ政治的意思が欠けている。今のところドルの存在が、債券市場のパニックから米国を隔離している。だが世界の基軸通貨を有することは、大勢が想定するような「決して壊れない盾」ではない。








