ものづくりの技は、日本の製造業最大の強みである。とはいえそれは、経験や勘といった属人的要素に依存するところが大きく、受け継ぐ仕組みがなければ、企業競争力は衰えることになりかねない。生産現場でこの問題が叫ばれ始めてから数年が経過した今、ようやく「解決の手段」を手にすることができるようになった。ものづくりのノウハウが凝縮されたソリューションを導入した企業は、着実に成果を上げ始めている。
製造業を取り巻く環境変化はますます加速している。“系列崩壊”が進む中で、国内はもちろん、韓国や中国をはじめとする海外メーカーとの競争は熾烈化。顧客からのコストや納期の要求は厳しくなるばかりだ。
製造業の企業が勝ち抜くためには、ものづくりプロセスを改めて見つめ直す必要がある。そのカギを握るのが生産管理システムだろう。
「生産効率の向上や生産リードタイムの削減を進める上で、コストや利益の見える化は不可欠です。これまでは、経験や勘といった属人的な管理でも対応できたかもしれませんが、顧客の要求に対応し続けるためには統合的なシステムの導入が必要です。長年使い続けた既存システムの場合にも、最近のビジネスニーズには対応しきれないというケースが多いのではないでしょうか」と問題提起するのは、旭化成エンジニアリング EICソリューション事業部営業部長の多田信嗣氏である。
こうした課題を解決するためのアプローチとして、旭化成エンジニアリングが提案するのが統合生産管理システム「AP-21」である。AP-21は旭化成グループのものづくり経験の中から生まれた。多田氏はこう続ける。
「当社は発足以来、旭化成グループの設備保全やシステム構築を担ってきました。そこで蓄積した技術を生かして、幅広いお客さまに対して価値を提供したい。そんな思いから、2001年にAP-21関連の事業を立ち上げました」
事業開始から10年以上を経て、AP-21は数十社に導入されるまでになった。
ペーパーレス化と人的ミスの最小化
受注業務の効率化を実現
旭化成グループの事業領域は幅広いが、その中には素材系のものづくりが多い。したがって、AP-21もこの分野の生産管理に特化している。製造プロセスの特性に応じて、AP-21は2つのタイプのソリューションを提供している。バッチ製造プロセスに対応したAP-21/Batchと、フィルムやシートの製造プロセスをサポートするAP-21/Rollである(コラム参照)。
カスタマイズの有無などによりAP-21の導入期間はさまざまだが、概ね半年から1年程度。ユーザー企業と旭化成エンジニアリング、それぞれから数人程度が参加してプロジェクトチームを組成して導入を進める。
「当社側からは製造現場を熟知したプロジェクト責任者やプロジェクトマネージャー、SEが参加し、システムが安定稼働するまで手厚い支援を行っています」と多田氏。システム稼働後にも、リモートメンテナンスによる迅速なサポート、定期訪問などを実施しているという。
AP-21の導入効果は多方面に及ぶ。
「手作業をシステム化することで、ペーパーレス化を実現するとともに、人的なミスを最小化することもできます。また、受注業務の効率化も重要。受注業務をAP-21に一本化することで、受注オペレーターを削減できたケースも。属人的な業務の標準化により『誰でも受注業務ができるようになった』というお客さまの声もあります」