50ドルで義足を、ジャンク品でトラクターを。
「ファブラボ」で生まれるローコストのテクノロジー

 稼ぐ手段だけでなく、ゴミという素材は様々な場面で活躍する。「ファブラボ(Fablab)」での事例を紹介しよう。

 ファブラボとは、3次元プリンタやレーザーカッターといったデジタルものづくり機器を備えた、市民のための実験工房である。2002年にアメリカとインドではじまったファブラボは、今や世界的に大きな拡がりを見せており、世界50ヵ国、200ヵ所以上の地域に誕生している。

 インドネシアの古都、ジョグジャカルタのファブラボで進められていたのは、安価な義足づくりのプロジェクトだ。スタッフのトニーは言う。

 「コストを抑えるには、手に入りやすい素材を使うことが必要です。私たちが注目しているのは、ココナッツやパイナップルの殻からとれる繊維です。この繊維を、他の材料に混ぜれば、丈夫な素材になるかもしれません。この国では、どちらもたくさんとれますし、殻はたくさん捨てられていますからね」

 彼らは、1000万人以上といわれる発展途上国の義足ニーズに対応するために、製造コストを50ドル以下に抑えることを目指している。

インドネシアのファブラボで作られた義足の試作品(左)と、インドのファブラボで作られた小型トラクター(右)。どちらも「ゴミ」からつくられている
拡大画像表示

 インドの農村、パバール村のファブラボで製作されたのは、小型のトラクターだ。廃車のパーツを複数組み合わせてつくったという。サイズが小型なのは、大規模な畑を持たない大多数の農家にとっては、それで充分だからである。インドの自動車メーカーが、このLHPと名づけられた小型トラクターのコンセプトに目をつけ、新たな商品ラインナップに加えたそうだ。

 「私たちは、貧しい農村の暮らしを、テクノロジーを通じて改善するために活動しています。高価なテクノロジーは、貧困層には届きません。どれだけローコストでつくるかという問題に、いつも頭を悩ませています。だから、ジャンク品はとても魅力的な〈資源〉なんです」

 インドのファブラボスタッフ、アミトラージはこう語った。

「ゴミ」を「資源」と読み替えるだけの
「目」と知恵をもっているか?

 これまで歩いてきた東南アジア各国の事例は、日本のように何でも手に入る状況ではないからこそ、知恵を凝らし、「ゴミ」に見えるそれから可能性を引きだすことに成功している。ものづくりには、素材を見つける「目」と、加工する「手」が必要である。何でも手に入ると思っているがゆえに、僕たちの「目」は曇ってしまっているのではないだろうか。

 いや、わざわざゴミを使うだなんて、不便な発展途上国では必要なことかもしれないが、日本では不要ではないか。もしそう感じたのなら、2011年の3月11日を思い出してほしい。あれは過去の出来事ではない。いつかまた起きる未来の出来事である。あなたが生き延び、よりよく生き続けようと思ってあたりを見回した時、そこにあるのは「ガレキ」だろうか。それとも「資源」だろうか。

 大きな災害を持ち出さずとも、実際のところ、僕たちが問題と向き合う時に、あらゆる資源を取り寄せることなどできやしないのである。しかし、そこにある「それ」が資源だと気づける「目」を取り戻した時、ものづくりは僕らが抱える問題を解決し、新しく立ち上がるための力となるはずだ。

TOP