2013年11月26日、東京・青山のTEPIAホールで、ダイヤモンド社主催のセミナー「進化するOJT~経験から学ぶ仕組みづくり~」(特別協賛・オリックスグループ ブルーウェーブ)が開催された。企業の人事担当者を中心に、現場でのOJTによる若手社員の育て方を、講演やワークショップを通じて学んでもらおうというねらい。多くの参加者が集まった同セミナーの内容をレポートする。

成長のカギを握るのは
「経験から学ぶ力」

 若者の就労観が時代とともに変わり、団塊世代の大量退職などで若手の指導に長けたベテラン社員の人材不足も深刻化している。そんな中、「現場で若手が育たない」「若手を育てられる中堅社員がいない」といった悩みを抱える人事担当者は少なくない。

 こうした人事担当者の悩みに応えるべく、「進化するOJT~経験から学ぶ仕組みづくり~」が開催された。セミナーでは、北海道大学大学院経済学研究科の松尾陸教授が開発したOJT診断システム「DLL(Diamond Inventory of Learning Leader)」を活用。受講者は事前にWeb上でDLLを受検し、その診断結果を基にセミナーに臨んだ。

 セミナーの第1部では、松尾教授が「経験学習を促すOJTの仕組作り」と題して、社員の成長を促すOJTのポイントを解説した。

 松尾氏によれば、社会人の能力向上の70%は、仕事の経験から学ぶことによって実現するという。では、どうすれば効果的に経験から学ぶことができるのか。その秘訣は、何かを経験したら(具体的経験)、それを振り返り(内省)、そこから教訓を引き出して(持論化)、次に活かす(新しい状況への応用)というサイクルを回すことにあるという。

松尾陸 北海道大学大学院
経済学研究科
教授

「例えば、サッカー日本代表の本田圭佑選手は、中学時代から毎日、練習日誌をつけていたそうです。日誌をつけながら一日の練習を振り返り、そこから気付きを得るというサイクルを繰り返すことによって、本田選手は一流の選手に成長した。この振り返りをしっかりできるかどうかが、その後の成長を大きく左右するのです」(松尾氏)

 とはいうものの、誰もが同じように経験から学び、気付きを得られるわけではない。その違いは、「仕事に向かう姿勢」にある、と松尾氏は指摘する。

「自分の能力よりも高い目標に挑戦する姿勢(ストレッチ)と、過去を振り返ってしっかりと内省する力(リフレクション)、さらには、仕事の意義や自分の成長を感じながら、仕事を楽しむ力(エンジョイメント)。この三つが相乗効果を発揮したとき、経験から多くのものを学ぶことができます。

 この三つを動かすのが、“思い”と“つながり”です。自分なりのしっかりした目標や価値観(=思い)があれば、果敢に挑戦できるし、つながりがあれば、自分が挑戦するときに背中を押してもらったり、振り返るときにアドバイスをもらったりできる。つまり、思いとつながりの間には密接な相互作用があるのです」