業務能力と接遇力を
同時に上げることが難しいとき

 では具体的に、どのような方法で解決をしていけばいいのだろうか。

 処理スピードの改善のためのパソコンの導入や、人員確保といった解決策に加え、社員の心の持ち方一つで、お客さまの気持ちを和らげることができると浜田氏は語る。

「順番待ちをしている方は、みんな、さまざまな不安や不満を抱きながら待ち続けています。そんな気持ちを和らげるためには、何より社員が、お待たせして申し訳ない、少しでも速くできるよう一生懸命頑張っているというメッセージを行動で示す必要があります。例えば、お待たせして申し訳ないという気持ちをきちんと話した(表現した)うえで、社員が、疲れも見せずに、笑顔でテキパキと一生懸命動き回っている姿を見せると、待たされている状況は全く同じでも、あんなに頑張っているのだから仕方がない、順番が来るまで待つしかないというお客さまの理解を促すことでしょう」

 業務能力を十分備えつつ、さらに個人の接遇力を高め、かつ、職場環境全体の雰囲気や、全社員の姿を通じてこそ伝わる接遇にこそ、サービスに新たな魅力を与え、さらには企業イメージを高め、売り上げ向上をもたらす真の力が宿ってくる。

 顧客満足のためには、商品力やサービス力、および社員による接遇力の両方が求められるが、業務能力と接遇力を、一度に両方上げるのが困難な場合、商品知識やサービス内容を熟知することから始め、接遇力習得に結び付けてはどうだろうか。商品やサービスの開発は、顧客要望をかなえることを目的にしているため、顧客への提案方法を考慮した商品知識やサービス内容に関する知識習得は、おのずと接遇力のレベルアップにつながるといえよう。

 次回は、接遇を理解するための3要素「気づく」「聴く」「届ける」に注目し、「接遇力」をさらに掘り下げていく。