【3】マニュアル通りの対応を
不快に感じる
接遇がマニュアル一辺倒の対応ではなく、自分らしさをベースにした柔軟な対応によるものであることは、これまでも再三述べてきた通りだが、そのためには、社員一人ひとりが、自分らしい心遣いを形で表せる環境づくりを経営者自らが行うことが重要だと浜田氏は説く。
「経営者の中には、きちんと丁寧に対応することだけがマナーであると考える方がいらっしゃるかもしれません。真に大切なことは、相手を第一に考えた気持ちや心遣いをその相手に届けることであり、基本マナーが整っていれば、各人に応じてアレンジすることは全く構いません」
むしろ、ひたすらマニュアルに従っているだけの対応は、まるでロボットに相手をされているようで、不愉快な感情を抱かせる恐れがあるという。同じく、社員もマニュアル通りの対応を強いられているだけでは、仕事への意欲が減退するなど本末転倒になりかねない。浜田氏はさらに指摘する。
「例えば、タクシーに乗った際、仕事の疲れを忘れて、ぼーっとしたいときに、運転手に何度も話しかけられたときの苦痛は、誰もが容易に想像できると思います。お客さまの状況に合わせた対応が求められます」
【4】自分のテンポに合わせて
対応されることを好む
顧客に対する話し方やスピードは、社員それぞれで異なるものの、接遇ということを考えた場合、あくまでもそれは顧客を第一に考える必要がある。浜田氏はその臨機応変な対応を次のように説明する。
「マニュアルでは、ゆっくり話すよう推奨されていることが多いと思いますが、もっと早く話してほしいと、急がれているお客さまにはそのスピードに合わせることが望ましいでしょう。例えば、顧客がチラチラと時計を見るなど焦っているようなときには少しだけ早くしゃべり、テキパキと応対することができれば、お客さまに自分の急いでいる気持ちをしっかりとわかってくれているのだと、気づきや心遣いに好印象を抱いてもらえるはずです」
【5】社員の連携のよさで
サービスの質を評価する
社員間の縦横の連絡をしっかりと取るといったコミュニケーション体制を徹底しておくことで、顧客に無用な不快感を与えることを避けることができる。顧客は、社員の対応を、会社と重ねながら見ているということを常に意識したい。接遇にも、「ホウ・レン・ソウ(報告、連絡、相談)」が必要である。
「かつて私がキャビンアテンダントとして乗務していた際に、食事の好き嫌いや薬の服用など、お客さまに関する情報は口頭で伝えるとともにメモで残し、お客さまの目に触れない場所で社員全員が共有できるようにしていました。こうすれば、薬を飲まれたお客さまに、知らずにアルコールを提供するといったことがなくなるのです」
実体験を基に浜田氏はこのように説明する。例えば、病院の受付で待たせてしまいクレームを受けたことを、会計の担当者が認識できていれば、会計の手続きを急いだり、受付で待たせてしまったことをわびたりといった気づかいができるかもしれない。こうしたちょっとしたひと言で、顧客の不満は和らぐのだ。