【6】いつも同じレベルのサービスが
  受けられることで安心感を抱く

 接遇は、1人だけ秀でているのでは十分とはいえず、社員全員が粒ぞろいの接遇力を備えていなければならないと浜田氏は言う。

「接客について、この店は感じがいいと思われるのは、ほぼ社員全員が同じレベルのサービスを行っているものです。お客さまは、店の誰が接客を担当しても感じがよいので、いつも安心して任せられると思い、また足を運ぶようになります」

 たった1人の心ない応対により、その企業のイメージが大きくダウンすることも少なくない。それぞれタイプは違っても、みんなが感じがいいと思われる状態が、企業の目指すべき接遇のあり方だといえるかもしれない。

【7】さりげない心遣いと
  優しさを喜ぶ

 関わり過ぎないこと、顧客の心に負担を与えずに、さりげなく接客を行うことも、心遣いを伝える方法の一つだと浜田氏は説く。

「例えば、レストランで食事をしている際に、壁際に並んだ社員が、食事が終わった皿をすぐに下げようと待機したり、水をつぎ足そうと、お客さまの一挙手一投足をじっと見守る様子が伝わってきたらどうでしょうか。押し付けがましさを感じさせる対応は、決して悪いことをしているわけではなく、一生懸命なのですが、お客さまはリラックスできません」

【8】社員の表情やしぐさから
  プロ意識の有無を見いだす

 接遇には、プロ意識が必要になる。浜田氏の考えるプロ意識とは、自分に自信と誇りを持って企業の顔として仕事をすることだという。浜田氏はこう説明する。

「例えば、銀行などが住宅ローンの説明会を開く際は、大広間に多くのテーブルを設け、一日中あわただしく接客に追われることが少なくない。疲れてくると、お客さまの相談に応じるときに、つい机の下で足を組んでしまいがちです。テーブルに座っている方には見えなくても、机の後ろを通るお客さまには、足を組んでいる姿が丸わかりになってしまいます」

 さらに浜田氏は続ける。「プロ意識を持って働く社員の姿を見るのは、顧客の立場からすれば、大変気持ちがよいもので、安心感や信頼感をもたらします。すてきだという思いを抱きながら顧客が社員を見ていることで、社員自身もさらに接遇への意欲を高める要因にもなります」

 行き届いた接遇は、顧客や社員はもちろん、環境にもよい効果を生み出すことになるのだ。

 次回は、労働環境の整備が「接遇力」を育み、企業を強くする効果について考察する。