経営者が現場を見る
――何を気にして見ればいいのか

 長年つくられてきた企業風土の改善を行うと決めたら、どこに問題があり、どこから手を付けていくかを判断するために、経営者自らの目で現場を見ることが重要だ。下記の点に注意して、現場をしっかりとチェックするようお勧めする。

・社員同士のコミュニケーションはうまくいっているのか
・働きやすい職場環境になっているのか
・社員は現状をどのように捉えているのか
・社員は会社に対してどのような思いでいるのか

 現場のチェックについて、浜田氏は独自の見解を持つ。
「接客の必要な業種の場合、日頃、顔を合わせることが少ない、現場の社員やアルバイト、パートの方に話を聞くことをお勧めします。直接、お客さまと関わる社員たちこそ、働きやすさの度合い、職場の風土が顧客サービスを行う上で、どのように影響しているのかなど、企業にとって大切なことに気づいているものです。社長が来ると知り、普段と違うたたずまいになっては意味がありませんから、突然、店に足を運んだりして、ありのままの現場を見たり、お客さまの振りをして電話をかけるなど、現場の声を地道に拾い上げることが必要です。ここで得た気づきを、接遇レクチャーに生かし、改善することで、企業風土は少しずつ変化していくことでしょう」

 企業の接遇力を高めるために、実際に、浜田氏が取り組んでいるのが、接遇力を定着させる仕組みづくりである。

 そのためには、まず接遇改善を目的としたプロジェクトを立ち上げることからスタートする。このプロジェクトは、全社員に対して基本的な接客マナーの浸透と、接遇の重要性の意識付け、企業としての接遇力向上のベースをつくり上げる重要な役割を担っている。

 経営者の接遇力強化の思いを、形にすることのできるメンバー選びは、接遇力改善の必要性を強く感じている人、自らが接遇に興味と関心が高い人、接遇の経験のある人、現場を知る人も加わり、3~8人、多くて10人程度が望ましい。そのリーダーが経営者や役員と連携し、進めていくことが必要となる。

 その後、アンケートや覆面調査、ヒアリングで自社の現状を洗い出し、顧客目線で調査結果の分析を行い、課題を明確化。課題に基づいた接遇研修を行い、弱点を克服していく。さらに、分析結果を活用した具体的なケーススタディで実践力を磨く。「こういう場面があります。あなたならどうしますか?」といったロールプレーイングを続けることで、接遇の基本を再確認する。マナーではない、接遇の基本をしっかり身に付けることで、モチベーションも高まる。