効果的な接遇力研修は
どのように設計すべきか
実際に、浜田氏が接遇の研修を行うことで、それ以外のさまざまなことがわかってくるそうだ。
「日頃疑問に思っていた問題が解決した」
「思っていた以上に多くの気づきがあった」
「想像以上に忘れていたこともあったけれど、明日からまたやってみよう」
こうした気づきによって、今度は現場で接遇を実践することで、「研修で学んだことを実践してみたらお客さまの反応が変わってきた」など、社員の意識は、さらに変化する。
浜田氏は、プロジェクトによって、継続的にフォローしていくことを勧めている。また、継続的な研修の開催、日々の業務から生じる問題意識を共有することの重要性をこのように語っている。
「可能であれば、半年に1度の割合で研修を行うことが有効です。現場から上がってきた声を材料として、応用的なカリキュラムを組むことにより、接遇の意識付けを新たにし、接客マナーも含めた、基本の再確認などができるようなものが理想です。現場の声を共有するため、自由な上下間コミュニケーションもあるといいでしょう」
また、接遇研修を実施する際には、社内のスタッフだけで行うのか、それとも外部の専門家に依頼したほうがよいのかで迷う場合もあるだろう。事例研究の場合には、ちょっとしたミーティングの形で、実際に現場で起こったケースを取り上げてロールプレーイングすることで比較的容易にできるかもしれない。しかし、顧客が悪いのか、社内体制が悪いのか、判断がつきにくい場合、どうしても身びいきの結果をもたらしてしまうことがある。
また、現場調査の分析段階においてすでに、主観的な見方が先行してしまいがちな例も多い。研修を意味あるものにするには、その企画段階から客観的な視点が必要だ。社内とは全く違う発想で、顧客の視点に立てる専門家、接遇コンサルタントなどの意見を取り入れることにより、自社からは出てこないような気づきがもたらされ、それが、新鮮な対応となって現場にフィードバックされる。
中小企業の場合はコスト面の検証が必要ではあるが、3回の研修のうち1回は外部コンサルタントに依頼し、接遇力の精度を高める工夫も必要だろう。
接遇の意図は深い。個人の力量に頼るところもある。しかしながら、レクチャーを積むことにより身に付けることは可能だ。経営者と現場が認識を共有することで、企業価値の飛躍も期待できる。専門家のアドバイスには今まで着目してこなかった気づきも多く、新たな取り組みへのきっかけともなるであろう。顧客満足を高め、社内環境の向上をもたらし、ひいては競争力を高める接遇を、深く理解し実行する企業の未来は明るいはずだ。