カスタマー・リレーションシップを強化する
デジタル化がビジネスの現場に大きな変化をもたらす例は、シック・ジャパンのようなB2Cビジネスに多く見られます。しかも、デジタル技術は日進月歩で進化しているので、デジタルという武器を手にした企業とそうでない企業の差は広がる一方です。
その差は、顧客との関係が短期的か長期的かということに表れます。シック・ジャパンの例でいえば、デジタルマーケティングによって顧客との長期的関係を構築できるようになりました。それこそが、企業の長期的成長の糧であることは周知の事実です。つまり、デジタル化へ舵を切るタイミングが遅れるほど長期的成長は遠のくわけです。
それなのに、なぜ、多くの企業が現状に甘んじているのでしょうか。
そもそもマーケティング施策は、短期間での成果を求められるという根本的な問題があります。つまり、結果がすぐに出ないのはマーケティング施策上、都合が悪いのです。さらに、部署間の調整が難しかったり、社内調整を進める上で意思決定者が不足していたりと、組織的な問題も山積しています。
一方、デジタルマーケティングに舵を切った企業は、顧客接点を拡大して得た多くの有益情報を基にさまざまな施策を打ち、成功事例を積み上げています。つまり、収集した情報のシステム化によって、長期戦略のベースが構築されているのです。
顧客接点は「企業の顔」であり、他社との差別化のカギを握ります。しかし、システムとして統合されたサービス・インターフェースを構築している企業は稀で、デジタルマーケティングの世界も今その途についたばかりです。
例えば、ある部門がキャンペーンで獲得した顧客に、別の部門が実施したキャンペーンで接触するなど、サービス・インターフェースは無手勝流に設置されています。これをシンプル化するということは、独立して機能する顧客接点を「リエンジニアリング」することにほかなりません。
これについて、経営者の理解はかなり進んでいるようです。というのも、この2年で当社に寄せられる顧客の相談内容が顧客情報管理へと大きく変化しているのです。
一方で、デジタル技術を駆使するマーケティング施策は変化が早いだけに先行き不透明という理由から、企業戦略上の優先順位を下げてしまう例が少なくありません。そのため二の足を踏む企業も多く、1年後に同じ企業から同じ相談が寄せられることもあります。先延ばししても、結局帰り着くところはカスタマー・リレーションシップの強化なのです。