TCO全体で見れば
決して高価ではない

 メインフレームには“高い”というイメージがつきまとう。「いつも億単位のコストがかかる」と思い込んでいる人も多いだろう。しかし、高機能化される一方でIBMメインフレーム自体の価格は下がってきている。最新のモデルではキャンペーン価格で790万円からに設定されていたという。宇田氏は「本当にやりたいことを実現しようとするとPCサーバーよりメインフレームのほうが安くなることがあります」と指摘する。

 分散しているデータを集約したり、システムの24時間稼働に対応したり、処理のピークに合わせて処理能力を高めたりすれば、PCサーバーでは新たな費用がかかる。しかし、IBMメインフレームであればすべて1台で済む。処理が急増した時には、あらかじめ装備されている予備のCPUを稼働させて対応することもできる。

日本アイ・ビー・エム
System z テクニカル・セールス
高塩愛子氏

 大島氏は「多くのサーバーを1台に集約できるので、設置するためのスペースも削減できて、運用の手間もかかりません」と集約化のメリットを強調する。台数が減るので、電力消費量も減らすことができる上に、サーバーごとにかかっていたソフトウエア・ライセンスの費用や、一元化によって運用作業も大幅に削減できる。

 また、堅牢で故障しないことのコストメリットも大きい。「System zは平均故障間隔が35年以上という堅牢性を誇っています。これは、内部の部品をあらかじめ二重化し障害発生時には無停止で部品の自動切り換えを行うことで、全体の故障にはつなげないためです」と高塩氏は語る。さらに、「内部に集約される仮想サーバーはおのおのの独立性が高く、一つに障害が発生しても全体へ影響を及ぼすことはまずありません。多数の物理サーバーをこのような堅牢性の高い1台に集約するということは、TCOの削減につながります」と続ける。

 実際、分散系システムの統合化は世界の一つの流れになっており、IBMメインフレームの出荷高の伸びの推進力の一つとなっている。

プレミアムな最新技術を
より多くのユーザーへ

 この記事の冒頭で「基幹系システム」の説明をしたが、それと対を成すものとして、メールサーバーや企業のホームページを管理するサーバー、モバイル用のサーバーなどが挙げられるだろう。しかし、ITがビジネスに不可欠な存在となるにつれて、両者の境界は曖昧になってきている。メールサーバーが1時間止まるとどのような事態になるかを想像してみれば、その理由も明白だ。そこで、前述したオープンへの対応と相まって、基幹系以外のシステムをIBMメインフレームに統合する動きも加速しているという。

 さらにもう一つ、「ビッグデータ」という言葉に象徴されるデータ急増の中にあって、複数のサーバーでデータを管理するのではなく、メインフレームで統合して管理するという選択肢も出てくる。「複数マシンを接続するよりも処理速度が格段に上がるのは当然の帰結です。これまで数時間かかっていたデータ分析が数秒に短縮された例もあります。もともとメインフレームでは基幹のビジネスデータが守られているわけですし、データの散逸などのビジネスリスクを避けることにもつながります」と宇田氏は指摘する。

 今回の取材で見えてきたような技術進化によって、今、IBMメインフレームは基幹業務の処理にとどまらず、ビッグデータの分析やクラウドの基盤、モバイル対応など、新たな領域での活用が広がっている。今後も経営に欠かせない存在となっていくに違いない。

 

●最新のIBMメインフレーム「zEnterprise BC12」の内部構造を
ムービーで紹介●