「『濃い味〈糖質ゼロ〉』の開発期間中のことを思い出すと、胃の痛みが蘇ります……」と苦笑いする蒲生さんに、もう思い出したくない商品ですか?と問うと「いえいえ、むしろ、これだけ制約がある中で作り出さなければならないのはおもしろいです」という職人気質な答えが返ってきた。

「私もかなりのビール好きですが、中でも香りや苦味が強い飲みごたえがあるものが好きなんです。そういう好みの私が、一消費者としても機能系だったらこれを選ぶ。自分が飲みたいものを作った、という思いがあります」

 さらに、蒲生さんは満面に笑みを浮かべてこう言った。

「これからの季節はよく冷やして飲むのが格別でしょうが、奥深い味わいがあるだけに、個人的には常温で飲むのもお気に入りです。とにかく、ビールが好きな人に、もしくは、本当はビールが飲みたいのに身体を気遣って我慢して機能系ビール飲料を飲んでいる人に、ぜひとも一度飲んでみていただきたいと思っています」

 蒲生さんから開発の顛末について根堀り葉掘り話を聞いているうちに、「濃い味〈糖質ゼロ〉」が飲みたくなっている自分に気づく。取材を終えるとその足で直ちに近所のスーパーに足を運び、蒲生さん自慢の1本を手に取った。そして家に着くや否や、喉を鳴らしながら瞬く間にそれを飲み干した。次の瞬間、脳裏に浮かんだのはこんな感想だ。

「なるほど、商品名にもなっている"濃い味"とは、こうした味わいを表現していたのか。確かにこの味は……」

 最終的に味覚は個人の好みに帰着するので、あえて具体的な形容は控えておこう。とにかく、健康に気を遣いながらも、けっして味でも妥協せずに愛飲できると確信したことだけは間違いない。

ビール職人・蒲生さんの苦悩の日々を綴った
アニメーション・ムービーも公開

 これまで紹介してきた蒲生さんの商品開発までの日々を、アニメーション形式で描いたスペシャルムービーが、WEB限定で公開されている。

 楽曲には、ジャズをベースにした音楽性が人気のミュージシャン・大橋トリオの名曲『そんなことがすてきです。』を使用し、ナレーターには『北の国から』『ALWAYS~3丁目の夕日』などで活躍の俳優・吉岡秀隆を起用。さらに、アニメーターには「スヌーピー」や「タイガーマスク」を手掛ける白梅進など、豪華キャストが贈る120秒の感動物語だ。

(取材・文/大西洋平 撮影/堀内慎祐)