首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生する確率が30年以内に70%と予測される今、建物の耐震化が喫緊の課題となっている。旧耐震基準のマンションは全国に約106万戸。そのうち40万戸近くを擁する東京都では、全国に先駆けた耐震化事業に取り組んでいる。その内容を紹介しつつ、耐震化の現状と課題について考えてみたい。
耐震診断と耐震改修
最大の難関は費用と合意形成
日本は、いつどこで大きな地震が発生してもおかしくない地震大国である。建物の規模が大きいマンションが倒壊すれば、近隣の建物を押しつぶしてしまうかもしれない。倒壊物が道をふさげば、救命救急、消火活動、物資輸送など、一刻を争う応急活動に支障を来す。
ことに建物が密集する都会では、そのリスクが高くなる。マンションの耐震化は、居住者の安全だけでなく、地域の安全を守る上でも不可欠なのである。
東京都に建つ分譲マンションは5万3213棟。そのうち、旧耐震基準のマンションは1万1892棟で、23区内に1万0089棟が集中している。下の図は、その分布を示したものである。
旧耐震基準マンションとは、耐震基準が改正された1981年5月31日以前に建築確認が下りたもので、耐震性能が不足している可能性がある。さらに、71年5月以前に建てられたもの(注1)は、旧耐震基準より古い耐震基準となっており、特に要注意だ。
(注1)1971年に建築基準法が改正されて旧耐震基準となったので、それ以前のものはさらに古い耐震基準で建てられた建物(旧々耐震とも呼ばれる)。