東京都都市整備局
住宅政策推進部マンション課長
高橋竜太郎 氏

「かつてマンションは、港区、新宿区、渋谷区などの都心の一等地から建ち始め、その後に周辺の杉並区、世田谷区、大田区などに広がっていきました。それも駅前や、環状7号線、環状8号線、青梅街道、甲州街道といった幹線道路沿いなど、利便性の高い地域に先行的に建った。それらが現在、老朽化し、耐震化が急がれているわけです」

 こう説明してくれるのは、東京都都市整備局住宅政策推進部マンション課長の高橋竜太郎氏。

 耐震化は、耐震診断を実施し、自分が住むマンションの耐震性能を把握することから始まる。

 ところが、東京都が、都内の旧耐震基準の分譲マンションを対象に行ったアンケート調査によると、耐震診断未実施が8割を超え(図1)、そのうち6割近くは診断実施の検討さえしていない(図2)。

「耐震診断で万が一悪い結果が出たら、資産価値が下がって売れにくくなる、耐震改修するにも費用がないといった声が多く、耐震診断を実施するための合意形成(原則過半数の賛成が要件)が難しいのが、その理由です」

 RC造建築物の耐震性能はIs値(構造耐震指標)という指標で表され、値が高いほど耐震性が高くなる。

「地震動に対して必要な耐震性を確保している」と判断されるのは、Is値が0.6以上の場合。Is値が0.3以上0.6未満の場合は「地震動に対して倒壊・崩壊する危険性がある」、Is値が0.3未満なら「地震動に対して倒壊・崩壊する危険性が高い」と判断される。

 つまり、耐震診断を実施して、Is値が0.6未満と判断されたら、資産価値が下がってしまうと懸念する権利者が多いということ。家は大切な資産だという気持ちは分かるが、放っておけば年々建物の老朽化が進み、地震で倒壊・崩壊する危険性は高まっていく。それこそ資産価値を下げる要因となってしまうだろう。