「もちろん、旧耐震基準の建物が全てダメだというわけではありません。アンケート調査でも36.8%が耐震性を満たしています(図3)。団地によくあるRC造・壁式構造やプレキャストコンクリート工法(注2)の建物は壁量が多いため、一般に耐震性が高いようです」

 これに対し、ラーメン構造(注3)の旧耐震基準の建物は、過去の大地震で大きな被害を受けているケースが多い。また、たとえ新耐震基準でも、構造上のバランスが悪いマンションは耐震性の確認が必要と言われている。

 平面形状または断面形状が不整形なマンション、高層部と下層部で構造形式が異なるマンション、細長い形状の(辺長比が大きい)マンション、ピロティ形式の(1階の駐車場や店舗により壁が抜けている)マンション、耐力壁がバランスよく配置されていないマンションなどは、要注意である。

合意形成促進に向け
耐震改修の決議要件が緩和 

(出所)東京都都市整備局「マンション実態調査結果」
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 さて、耐震診断でさえ合意形成に1年以上もかかるケースがあるというのだから、耐震改修となればなおさらだ。

 耐震改修工事には、構造部分の強度を増大させる、粘り強さ(靭性・じんせい)を高めるなど、さまざまな工法があるが、柱や壁の補強で専有面積が減少する住戸や、鉄骨ブレースを外付けすることで居住性や景観が損なわれる住戸が出るケースが少なくない。

 このように、ある特定の人だけが特別な影響を受ける場合、たとえ決議要件である4分の3が賛成しても、この権利者が合意しない限り、改修工事の決議は成立しない。しかも、改修工事は大規模なものも多く、費用もかさむ。合意形成を困難にする要因が山積しているのだ。

 東京都のアンケートでも、耐震改修が必要なのは分かってはいるが未実施という分譲マンションが、なんと94.1%。困難を乗り切り、耐震改修を実施したマンションは、わずか5.9%にとどまっている(図4)。

 こうした現状を受けて、東京都では、合意形成を支援するための制度や、耐震診断費用や耐震改修費用に対する助成を用意。さらに、国土交通省も耐震化促進のため、13年11月に「改正耐震改修促進法」を施行した。

 目を引くのが、自治体から耐震改修の必要性を認定された分譲マンションについて、耐震改修を行う場合の決議要件が4分の3以上から過半数に緩和された点と、容積率緩和などの特例措置を講じる点。合意形成と改修実施のハードルが少し下がったことになる。

 また、権利者の負担を軽減するため、耐震診断や改修費用の助成も一部で増額している。

(注2)高密度の鉄筋コンクリートのパネルを工場生産し、現場で壁式に組み立てて造る工法。
(注3)柱と梁を強く結合し、一体化させる造り。
 

 

この記事が収録されている「ダイヤモンドMOOK」2014年10月26日号『あなたのマンションが生まれ変わる! 2015』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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