ともかく日本政府は、政治の安定とトップ外交を民間企業とタイアップして強力に推進すべきだ。習近平国家主席と民間企業のトップが、一緒に経済外交をすることが度々ある。日本もようやく、安倍首相の中南米行脚に榊原経団連会長をはじめ数名が同行したが、この規模と回数を増やしてもらいたいものである。

新幹線が世界一になるために
越えるべき壁(5)
「M&A上手になる」

 第五の「越えるべき壁」は、M&A上手になることだ。ナブテスコという企業がある。航空機の飛行姿勢を制御するフライト・コントロール・アクチュエーターでは世界有数のメーカーであり、産業用ロボットの関節などで使用される精密減速機では世界市場で約60%のシェアを握る。建物用自動ドア開閉装置では、約50%の国内市場シェアだ。自動ドアに貼ってある「NABCO」マークは、ナブテスコのブランドだ。

 今後の柱の1つとして、鉄道車両用機器を掲げるが、新幹線・在来線においてブレーキ装置で約50%、ドア開閉装置で約70%の国内シェアを持つものの、海外では苦戦を強いられている。次に紹介するのは、元ナブテスコの技術の要職を務められた方の言葉だ。

 「(海外の同業と)競合になって、いつも負ける。技術はうちの方が絶対良い。それはシーメンスもアルストムも認めている。でも、勝てない」

 ネックは海外での実績だった。安全性を重んじる鉄道機器は、技術的に優れていても、規格準拠や納入実績など客観的基準を重んじる。そこで、ナブテスコはシーメンスに納入実績があるイタリアの同業を買収した。これにより、ビッグ3の一角であるシーメンスへの販売ルートは確保されたことになる。単なる規模を追い求めるM&Aではなく、目的が明確で大変良い。

 筆者が強い関心を持っているM&A案件がある。先日、メディアでは発表されたイタリアのフィンメカニカの鉄道信号・車両事業の入札案件だ。フィンメカニカは防衛・航空事業をメイン事業とし、負債圧縮のために鉄道関連事業の売却を検討している。現在、日立と中国企業の一騎打ちとなっている。「総合鉄道システムインテグレーター」を目指す日立からすると、信号事業は是が非でも欲しい。

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「株式会社 新幹線」で鉄道総合ソリューション企業に

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