しかも、信号システムは収益力が高く、フィンメカニカは日立がフォーカスしている高速鉄道向け信号機では50%超のシェアを持っている。信号事業は150年の歴史を持ち、国際規格決定にも強い影響力を持つとされている。規格競争下手な日本企業にとっては、なんとも頼もしく映るはずだ。
資金力豊富な中国企業との一騎打ちのため、買収金額の吊り上りが不安材料であるが、それ以上に筆者が不安に感じている点がある。それは、M&A成立後に潜んでいる。M&Aは買う前よりも買収後の方が、はるかに重要だ。日本企業はポストM&Aが上手くない。
イタリアは労働法が硬直的なことで有名だ。以前の法では、企業が雇用調整を行うことが極めて困難であった。数年前、初めて企業に条件付きではあるものの解雇が行える権利が制定された。フィンメカニカの信号機事業は黒字であるが、同時に売却対象となっている車両事業は赤字なのだ。この車両部門の取り扱いは、ポストM&Aの重要事項になるだろう。
「話せばわかる」習慣が染みついている日本企業にとっては、法的に交渉を重ねる契約社会はいささか苦手であるが、グローバル化時代にはこのような特殊事情(海外から見れば特殊ではないが)と向き合いながら成長していかなくてはならない。
新幹線が世界一になるために
越えるべき壁(6)
「株式会社 新幹線」設立のススメ
そして第六の「越えるべき壁」は、「株式会社 新幹線」の設立である。2020年には22兆円と言われる鉄道産業。現在の日本はその1割程度だ。連載第15回でもお伝えしたが、日本の鉄道関連企業は車両、信号、ブレーキなどのユニットを担当している。一方、ビッグ3はトータルでカバーしている。
たとえるならば、顧客はフルコース料理を提供してくれるシェフを探しているのだが、日本は「私は前菜をつくらせたら世界一です」「メインのお魚は私にお任せを」「デザートではミシュランで星をもらっています」と、各々の得意分野をアピールしているに等しい。
乱暴を承知で言えば、日立製作所、川重、ナブテスコ、日本信号などの車両部門同士が合従連衡を行えば、強力な鉄道車両・機器製造会社が誕生するだろう。ここにJR東日本や東海なども参加すれば、まさに世界No.1の「鉄道総合ソリューション企業」が誕生する。



