JR東日本の野望は「グーグル化」?
鉄道業界でも始まりそうな地殻変動

「グーグルが○△自動車を買収!」

連載第14回でも触れた通り、もしこんな記事が新聞に出たら、自動車業界の勢力図は一変するだろう。

 実は、鉄道業界ではすでに3年前にこうした地殻変動が起きている。2011年、JR東日本は東急車両の車両製造部門を買収している。もともとJR東日本は、新津車両製作所という通勤用ステンレス車両の製造部門を傘下に持っていたが、これに加えて中堅の車両製造会社を買収して、車両製造を新しい柱に育てると宣言したのだ。

 この連載で度々触れてきたが、現在世界には「製造業のサービス業化」と「サービス業(IT企業も含む)の製造業化」という、2つの潮流がある。製造業のサービス業化の代表例はアップルであり、サービス業の製造業化の代表例はグーグルだ。

 JR東日本の試みは、「サービス業の製造業化」の流れにあたる。言い換えれば、「JR東日本のグーグル化」だ。これまで車両を購入していた鉄道運営会社が、自ら車両製造を積極化する意味はなんであろうか。世の中はむしろスリム化し、分業化していく傾向が強いにもかかわらず、だ。

 筆者はJR東日本に、鉄道機器の開発・製造から、敷設、運営、保守といった、鉄道に関する全ての事業を自社で担いながら、そのノウハウをフルパッケージで輸出する世界ナンバー1の鉄道総合カンパニーになろうという野心を感じる。まさに「市場創出型企業」への変身である。

 JR東日本は、車両というハードの開発・製造力を高め、従来の鉄道運行というサービスと一体化することで、自社でしかつくれない車両や鉄道サービスを提供していこうとしているように思えるのだ。

 筆者は、日本の鉄道業界は世界の頂点に立てると考えている。しかし現実的には、日本が海外で並み居る強豪たちと互角に戦い、勝ち残っていくためには、様々な壁を越えなくてはいけないのが現状だ。これから3回にわたり、2020年に市場規模が22兆円に達する言われる日本の鉄道業界に焦点をあて、製造業が抱える課題と成長の可能性を模索したいと思う。