新幹線が世界一になるために
越えるべき壁(4)
「政治の安定と挙国一致体制」
第四の「越えるべき壁」は、政治の安定と挙国一致体制だ。2012年の訪印の際に行われた、野田首相とシン首相とのトップ対談にて、インドの高速鉄道受注に関して日本の新幹線が大きく前進した。同年、シン首相の訪日予定が組まれていたので、一気に本契約につなげようと日本の外務省と日本企業連合は目論んでいた。しかし、野田首相が衆議院解散を決断し、シン首相の訪日が延期されてしまった。関係者の落胆ぶりは想像に難くない。
国が民の事業加速に貢献するどころか、足を引っ張ってしまう……。なんとも残念な話だ。
これほどコロコロ首相が交代していては、トップ同士の関係構築など成立し得えない。「やあ、久しぶり」と握手を交わすことの繰り返しで積み上がる信頼関係は、今も昔も変わらない。「次会うときは、どうせ別の人だろう」そう思われているから、G7でも日本の首相は影が薄い。政治の安定は、海外ビジネスの競争力強化においても必要不可欠だ。
インド高速鉄道案件は、日本の鉄道コンサル会社JICが予備調査を受注していることはすでにお伝えしているが、ここにきて中国が猛烈なアタックを開始している。先日、習近平国家主席が訪印し、モディ首相とのトップ対談に臨んだ。大型借款を含めた覚書を交わし、その中には高速鉄道の予備調査実施を捻じ込んできた。
侮れないのは、この覚書に鉄道大学設立が盛り込まれている点だ。インドが欲しいのは鉄道ではなく、自国で高速鉄道を敷設・運行できる人材と組織だ。極めて正しい提案だ。
中国のしたたかさを感じるのは、これだけではない。習近平国家主席とモディ首相は、モディ首相の故郷で会食をしているのだが、その日がモディ首相の64歳の誕生日なのだ。本質的でないと言われそうだが、筆者にはこれこそ本質的である気がしてならない。



