今取り組むべき
がん医療の4課題

 がん医療をめぐる最近のトピックスが、「がん登録制度」だ。13年に成立した「がん登録推進法」により、全ての病院と一部の診療所は、がん罹患情報を、都道府県に報告することが義務付けられた。さらに、各都道府県が情報を取りまとめ、国立がん研究センターに登録し、国立がん研究センターで全国の情報の取りまとめと死亡情報とのマッチングなどを実施することになる。

 16年1月から始まるがん登録制度のメリットは大きい。いわば、がんに関わるビッグデータの収集であり、その分析を通して、がんが見つかった経緯や治療法の違いによる生存率の違い、地域の課題なども明らかになり、がん対策を充実できる。「一部の自治体では1950年代から取り組まれてきましたが、登録が義務化されたことにより、がん対策は大きく前進することになります」(藤原局長)。

 その上で藤原局長は、がん医療対策として今から取り組むべき四つの課題を挙げる。(1)医療費についての患者への開示と説明、(2)就労支援に重点を置いたQOLの確立、(3)遺伝子診断による早期診断と予防医療の拡充、(4)食生活や喫煙・飲酒などを軸とするがん予防対策の充実、だ。

 医療コストの開示では、治療を開始する前に、新しい治療法も含めて費用と効果についての正しい理解を促し治療を選択できるようにしなければならない。

 遺伝子診断に基づく発症前の早期診断と予防医療は、がんの予防対策として極めて有効と考えられている。だが遺伝子情報は、“究極の個人情報”であり、米国では遺伝子情報による保険加入や就労の拒否を禁じる法律がある。「遺伝子診断では、将来、重い病になる人も分かるので、本人にどう伝えていくかという問題もあります」(藤原局長)。

 医療格差や予防医療を社会が受け入れるかどうか。さらに、受け入れるとした場合の新たな社会的な仕組みはどうあるべきなのか。医療関係者だけでなく国民の広い議論と理解が求められる時代になっている。