学生B 川添さんにお聞きします。僕たち若者にも、ワンコイン健診を受ける必要性はあるでしょうか?

川添 成人すれば、皆さん一人ひとりは健康保険料を支払っており、医療を受ける権利を持っています。私としては、個人が自分の健康を守るうえで、法定健診ではダメだと思っています。美容院に行くように、3ヶ月に一度、ファストファッションならぬファストヘルスケアみたいな感覚で健診を受けるべきだと思っています。もちろん、余計なものを受ける必要はありません。自分に必要なものだけでいい。ワンコイン健診を含めて、医療サービスを賢く利用していくことが大切です。

学生C 山下さんにお聞きします。TPP加盟交渉において、反対者の多くは「まわりが反対しているから」といった理由で同調している人が多いように思いますが、どうでしょうか?

山下 TPPに関しては、僕もそうだけど、あまりにわからない部分が多い。情報がきちっと公開されていないので、想像のなかでリスクを考えて反対している人、そしてそれに同調している人が多いと思います。ただし、TPP加盟を阻止できれば農業は再生できるかというと、それは全く別の話です。多様性を失ってきたことが、日本の農業が衰退してきた理由です。それが後継者不足となって表れているのです。本質的な問題が、TPPを語ることによって別の方向に行っているという危惧があります。ちなみに僕は、個人的にはTPPにはやや懐疑的です。日本人の単一性が災いし、最初はアメ玉を舐めさせられても、途中からグローバル企業にオイシイところを持っていかれ、最後はすってんてんとなる。そんな気がしています。だからこそ、やるんだったら、グローバル企業と同じ土俵じゃなくて、僕たちのような小規模ハイクオリティの世界だと思うんですよね。

学生D 皆さんにお聞きします。僕は地方から日本を盛り上げたいと思っていますが、無関心層を共感させて巻き込むにはどうしたらいいでしょうか?

山下 僕は自分の活動を通じて、「田舎からの国づくり」に取り組んでいます。自己実現と社会貢献といった、「理想と現実」を一致させることが、人を元気にさせる。それを実現するために何が必要かを考え、自ら行動することが大切。そうすれば自ずと共感してくれる人も増えると思います。

鈴木 面白い、オシャレ、楽しい。これが大事だと思います。エネルギーも同様です。難しい話だけをしていてもダメ。これからはアート的なアプローチも大切だと思っています。ちなみに私の地元では面白い動きがあります。湘南電力といって、サッカーチームの湘南ベルマーレと、売電会社のエナリスがタッグを組み、エネルギーとスポーツと社会貢献をつなぐ活動です。エナリスは儲かった利益の一部を湘南ベルマーレに提供し、ベルマーレはその資金をもとにスポーツを通じた地域貢献活動を行っています。いま、全国に電気を作る動きがありますが、その多くは売電するしかない。そんななか、この湘南電力のモデルは、スポーツという広がりのあるものを活用した、一つの新しいモデルを示してくれています。

川添 地域、地域でコミュニティのあり方とニーズは違います。それを理解したうえで、アプローチすることが大事だと思います。僕がやっているワンコイン健診であれば、学校だったり、農協だったり、宴会場だったり、ときにはパチンコ屋さんだったり。そこにあるにニーズにふさわしい場所や、呼びかけ方が重要だと思います。

米倉 僕は今日、川添さん、鈴木さん、山下さん3人のお話をお聞きして勇気が出ました。規制があるなかで実際に風穴を開けている。たとえその穴が小さいものだとしても、それがつながれば何かが変わっていく。やっぱり、一歩一歩進むことが大事ですね。転ぶ人を笑う人がいますが、絶対にそうじゃない。歩かなきゃ、転ばない。動かないで座っていた人より、動いた人のほうがすばらしいんだと。「転んだやつを笑わない」、そのことを皆さんに再確認させていただきました。ありがとうございました。

PHOTO: (C)Takeshi Ohyashiki