2次相続とは、父親が先に死亡し(1次相続)、その後母親が死亡した時点の相続をいう。1次相続では、「配偶者の税額軽減」の制度を使えるため、相続税額が抑えることができたが、2次相続ではこれが使えないため、相続増税の影響をもろに受ける。
特に配偶者なしで子どもが1人というケースは要注意だ。例えば、相続財産が7000万円の場合、相続税額は現行の100万円から480万円にアップ。相続財産が3億円の場合は、現行の7900万円から9180万円へと増え跳ね上がる。
「今回の改定で最も注意が必要なのは、家族構成によっても異なりますが、相続財産が5000万円くらいから3億円くらいの層の方々です。それ以上のいわゆる富裕層と違って、この層の方々は対策が進んでいないのが実感です。2015年以降相続が発生して、想像以上の税金の高さに驚かれる方が多くなるはずです」
ちなみに、「小規模宅地等の評価減」という制度があり、一例として被相続人と同居していた親族が取得した場合等特定居住用宅地等に該当すれば評価額の一定割合を減額することができる。改定後は、対象面積が増える(240㎡での減額割合80%が、330㎡へ拡大する)が、子等の相続人が別に持ち家を所有している場合は、原則として特定居住用宅地等の適用要件から外れるので注意が必要だ。
「こうした場合でも、その建物を賃貸に回せば、土地の評価額が貸家建付地評価となるだけでなく、適用要件を満たせば貸付用不動産の宅地として評価額を減額することができます。そういう知識があるとないでは納税額が大きく変わってきます。納税で得をするかしないかは、事前対策で決まります」
相続に関する代表的なトラブルとは?
相続対策はもとより、最近は相続に関する知識や対策がないために、トラブルになるケースが増えているという。司法統計年報によると、遺産分割事件の新受件数は増加傾向にあり、1992年の9762件から、2012年の1万5286件へと約1.6倍と大幅に増えている。
その代表的なトラブルの例として、峰尾氏は次の3つのケースを挙げる。
1つ目は、不動産を所有しているが、現金が少ない場合だ。遺産相続時は不動産を兄弟が共有することになる場合もあるが、兄弟が死亡してその子どもたちが相続する段階になると、権利関係が錯綜し、不動産の処分をしようにもできなくなるケースが多くなる。
2つ目は、遺言がない場合。このケースでは兄弟間の協議分割となるが、兄弟間の仲がよくても、嫁同士のコミュニケーションがうまく取れていないとトラブルになる。
「例えば、兄弟の子どもが医学部進学などでお金がかかる場合や、生前に親の面倒を見たか見ないかで揉め、遺産相続をめぐってトラブルに発展するケースがあります」
また遺言があっても、遺言自体に納得がいかないと、遺言自体の有効性を巡ってトラブルに発展するケースがある。「1次相続のときは、父親が死亡しても母親が防波堤になるが、2次相続で母も死亡すると、“歯止め”が利かなくなってしまう。比較的、資産家の方は、こうしたトラブルを想定して対策を進めている方が多いのですが、今まで相続に対して無縁だった方は、特に注意すべき点だといえます」と峰尾代表は言う。
3つ目は、借金も相続することを知らないケースだ。「相続はプラスの財産だけを相続するものと誤解されている方が多く、相続開始後3カ月以内に限定承認や放棄の手続きを行なわないと、マイナスの財産も相続することになってしまう。実際に、後で慌てる方も多いのです」