今、不動産市況はどうなっているのか。株と同じく住宅関連マーケットの「動き」にも一定の法則があることを知っておけば、落ち着いて冷静に対応できる。東京五輪開催に向け今後、段階を追い過熱していくとみられる首都圏のマンション市場動向を、過去と対比しながら予測してみたい。

“2段底”を経て
「回復」から「過熱」へ

住宅評論家
櫻井幸雄(さくらい ゆきお)

1984年に住宅情報誌の記者として取材を始めて以来、毎年200件以上のマンションや戸建てを探訪。実際に歩いて得た情報を基に、新聞、雑誌、テレビなどで評論活動を展開している。主著に『妻と夫のマンション学~50歳からの賢い購入術』(週刊住宅新聞社)、『マンション管理の鉄板事例48』(ダイヤモンド社)などがある。

 不動産市況は安定的な賃貸相場を軸として「消沈」「回復」「過熱」「冷却」の4つの局面を繰り返す、というのが私の4局面理論だ。

 日本の住宅市場は、2008年のリーマンショックあたりから「冷却期」に入り、長く「消沈期」が続いた。しかし、消沈は永続するものではなく、ある時点で底打ちする。

 底打ちの合図となるのは、分譲マンションが「賃貸の家賃並みのローン返済金で買える」価格水準になったときである。今回は、10年秋にその水準まで下がり、いったん「回復期」に入りかけた。

 ところがその「回復期」に襲ったのが、11年3月11日の東日本大震災だ。地震により、日本の不動産市況は再び「消沈期」に入った。このようなイレギュラーな動きは、30年に及ぶ私の取材経験でも初めてのことだった。

  いわば“2段底”のような状況から脱したのは、13年1月。ここはまだ記憶に新しい。アベノミクスによるインフレ誘導が呼び水となった。

  日銀が「年2%のインフレ」を目標として量的緩和を行うと株価が上がり始め、不動産投資の思惑も含めてマンション購入者が増加。売れ行きが上がり、価格も上昇傾向を示した。13年9月からは、さらに購入者が増えた。20年東京五輪開催が決定したからだ。