1つのスタイルに絞り込み
時代に合わせて進化させる

津谷祐司・代表取締役会長

 創業者である津谷祐司・代表取締役会長はこう説明する。

「コンテンツ企業といえば、次々と新しいアイディアを考え出して多彩なタイトルをどんどん生み出していく仕事のように思われがち。しかしながら、個別のコンテンツではなく、1つのスタイルを磨き上げていくというのが当社の手法です。たとえばピカソのキュビズムやゴッホの点描のように1つのスタイルを貫きながら、ソーシャルゲームの普及などといった時代の変化に応じてそのフォーマットを進化させています。黒澤明監督もつねに強い者と弱い者を対比させてきたし、小津安二郎監督にしても近代社会における父と娘の葛藤を描き続けてきました。我々の仕事もクリエイティブではあるけれど、あえて1つのスタイルに狭めているわけです」

 特定のスタイルを貫く――。これこそがフォーマット化であり、具体的にそれを実践するためにさまざまな仕組みが設けられているということだ。その一例として挙げられるのは、女心を徹底分析した恋愛コンテンツを作るためのバイブル「恋コン・バイブル」を社内で共有していることだろう。また、若手社員の漠然としたアイディアをロジカルなものへと変換させる仕掛けが施された「3行企画書」も特筆ものだ。

 さらに、ストーリーを作成するうえでは「三幕構造」を原点とし、「恋愛と戦いのドラマ」をコンテンツ作りの基本と位置づけている。補足すれば、ここで指す恋愛とは男女の間のみならず、家族愛や友情まで含めたもの。そして、戦いとは挑戦のことだ。いずれのコンテンツにおいても、ゲーム性よりもストーリー性が重視されている。プレイヤー自らが当事者として参加するドラマのような感覚で、恋の駆け引きを楽しめるシミュレーションゲームなのである。

 先程のコメント中にも日本が世界に誇る巨匠たちの名前が出てきたが、津谷会長は映画に関する造詣が深い。博報堂に在籍中に米国のUCLA映画学部大学院へ留学し、その監督コースで3年半にわたって学んだ経験がある。

 映画制作で学んだことは、ボルテージを興して成功を勝ち取るプロセスにおいても着実に生かされているという。前述した「恋愛と戦い(挑戦)」というキーワードに拘っているのも、それらがあらゆる映画におけるストーリーの本質となっているからだ。