映画作りの手法で
コンテンツを磨き上げる
一般的なゲーム制作会社とは一線を画し、あくまで映画作りの視点からコンテンツを生み出し、それがヒットへと結びついているのである。コンセプトやキャラクター設定など、コンテンツのメカニズムを分解したうえで、津谷会長が映画で学んだことを積極的に採り入れてフォーマット化。こうしてマニュアルに沿ったアプローチを徹底することで、単発のヒットでは終わらず、同等の支持を獲得するコンテンツを量産し続けてきた。
加えて、徹底して女性の目線からアプローチしていることもヒットに結びついていると言えよう。同社社員の平均年齢は28歳で、その6割を女性が占めている。31歳にして執行役員まで昇進した女性もいる。
いかにも女性の観点に基づいていると痛感するのが、あえて1日につき1話しか進めない設定になっていることだろう(一部の例外を除く)。コンテンツを供給する側からすれば、どんどんゲームを進めてもらいながら、円滑にクリアするためのアイテム購入などといった課金を促したいところだろう。
だが、多くの女性はゲームにそこまで熱中することを求めていないらしい。15分程度で終わる1話限定の設定のほうが就寝前などのスキマ時間にメールを打つ感覚で気軽に楽しめるし、むしろそのほうが格好の気分転換となるようだ。ボルテージは彼女たちのニーズを汲み取り、束の間の疑似体験を通じて仕事で疲れた女性たちに癒しの時間を提供しているのである。
すでに察しがついたかもしれないが、冒頭で触れたタイトルの書籍は、ボルテージがこうした成功の方程式を導き出すまでの経緯やフォーマットの概要、社内の組織・環境作りの工夫などについて、ジャーナリストの上阪徹氏が同社への度重なる取材を通じて克明に綴ったものだ。ゲーム業界に限らず異業種においても、新卒社員の即戦力化などで大いに参考になることだろう。
もちろん、ボルテージは現状に胡座をかくことなく、さらなる成長を求めて新たなチャレンジにも取り組んでいる。次回以降、その詳細について当連載企画でクローズアップしていくことにしたい。