これらはつねに最新のものに更新していき、この情報をもとに、「飲み残しの薬があるなら、飲まない理由を探って、他の薬剤に変更するなどを医師に相談する」「他の診療所からの重複投与による健康被害を未然に防ぐ」など患者の健康を担うのが薬剤師の役割だ。

 だが、朝日新聞の報道によれば、この薬局チェーンで働く薬剤師たちは、売り上げアップのために処方せんを集めるように求められ、キャパオーバーによって薬歴を書けない状況に追い込まれていたという。

 薬局と薬剤師が遵守すべき「療養担当規則」には、次の項目が掲げられている。

(調剤の一般的方針)
第8条 保険薬局において健康保険の調剤に従事する保険薬剤師(以下、「保険薬剤師」という)は、保険医等の交付した処方せんに基いて、患者の療養上妥当適切に調剤並びに薬学的管理及び指導を行わなければならない。

2 保険薬剤師は、調剤を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない。

(以下、略)

 薬歴の未記載は、この第8条違反だ。罰則はないものの、療養担当規則は健康保険を使って医療や投薬を行う施設が守るべきもので、薬剤師なら誰もが知っているはずだ。それを守らず、いくら会社の方針とはいえ、薬歴未記載を黙認していたのは、薬剤師一人ひとりの資質が問われることになる。

 会社の方針によって、不本意にも薬歴という重要な記録をおざなりにせざるを得なかった薬剤師たちは気の毒な面もあるが、本当に患者の健康を考えるなら、薬剤師としての職務を全うすることを優先すべきだったろう。

 薬歴やおくすり手帳で、患者のアレルギー体質や副作用歴などを確認しなければ、思わぬ事故を起こしていた可能性もある。そうした行為に、当の薬剤師たちは不安ではなかったのだろうか。

 ある薬剤師は、同業者が起こした今回の違反について、「健康被害なしと言うけれど、『ないという証拠がない』というのが正しい表現ではないか」と残念そうに言う。

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医薬分業は進んだが「調剤バブル」との揶揄も

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