CSRにおける「ステークホルダー・エンゲージメント」の重要性に注目が集まるいっぽうで、実際には取引先とのアンケートや顧客とのグループインタビューなど、関係者との対話にとどまっているケースが少なくない。カタログ通販大手の千趣会では、顧客からの寄付によるCSR活動を展開している。顧客の意思をくみ取りながら、活動内容を決定していくこの取り組みには、ステークホルダー・エンゲージメントへの重要なヒントが示されている。

全国の小学校で
出張授業を展開

「風が強ければ強いほど、発電量は増えるんだよ。風の力が2倍になると、エネルギーは8倍になるんだよ」「水力は天候に関係なく、いつでも電力を生み出せるんだ。すごいでしょう」──。再生可能エネルギーのメリットを生き生きとした表情で訴える小学生たち。教室の他の子どもたちは、その「30秒CM」に熱心に、時に大声で笑いながら見入っている。

 太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱の五つの再生可能エネルギーのそれぞれの特徴や仕組みを、グループごとにCMにして発表するというのがこの授業のコンセプト。CMという設定だから、派手なジェスチャーや笑いの要素が入っていてもオーケーだ。みんなで楽しみながら、再生可能エネルギーについて学ぶことができるという趣向になっている。

「ハハトコのグリーンパワー教室」の授業は、再生可能エネルギーの特徴や仕組みを30秒のCMにして発表するというもの。自ら調べ、自らプレゼンテーションすることで、子どもたちはエネルギーを自分たちの課題として感じることができる。

 これは、昨年の7月に横浜国立大学附属鎌倉小学校で行われた「第1回ハハトコのグリーンパワー教室」の一こまだ。この「教室」は、通販事業ベルメゾンを展開する千趣会が、CSRの一環として取り組んでいる活動である。「ハハトコ」とは、この活動が同社の主要な顧客である30代、40代の母親層とその子ども(母と子)を対象としていることを意味する。全国の小学校で再生可能エネルギーの出張授業を行うこの取り組みについて、同社広報部の萩原誠一氏は、次のように説明する。

千趣会
経営企画本部・広報部
萩原誠一氏

「東日本大震災以降、エネルギーが私たちの暮らしに直結していることをたくさんの人たちが認識するようになりました。暮らしに関わる商品を扱っている私たち千趣会も、エネルギーの問題に真剣に向かい合うことが求められています。しかし、エネルギーにまつわる課題は一朝一夕に解決できるものではありません。そこで、未来を担う小学生とそのお母さま方に再生可能エネルギーの可能性を地道に伝えていこうと考えました」

 再生可能エネルギーの特徴や仕組みを自分たちで発表するというコンセプトにしたのも、自らプレゼンすることでエネルギーを自分たちの課題と感じてほしいという思いがあったからだ。「グリーンパワー教室」はその後、少しずつプログラムの内容を変えながら、豊中(大阪)、福井、日本橋(東京)、沼津(静岡)、大町(長野)、那覇、八戸(青森)の各地の小学校で開催され好評を博している。今後も活動を継続していく予定だ。