「働きやすさ」のための
機能的な構造
「事業は人にあり」という企業理念にのっとり、キョーリンの新オフィスはそこで働く社員にとって「やさしい空間」がコンセプトに掲げられている。内装にはブリックや木などの天然素材が随所にあしらわれ、ベージュ系の暖色を基調にした穏やかな配色によって、きわめて柔らかい雰囲気が醸しだされている。パッと見た印象は、かなり女性的なセンスで作られたオフィスと言えるだろう。
だが、見た目のふんわりしたムードとは裏腹に、機能面ではきわめて合理的な思想が貫かれている。
まず創薬本部、医薬生産本部、医薬営業本部の3部門を仕切りのないフラットなフロアに集約させた。狙いは、社員間の部署を超えた素早いコミュニケーションを促進させることだ。社内には内部階段もあり、わざわざエレベーターを利用しなくても2階にまたがるフロアをスピーディーに、スムーズに行き来できる構造になっている。
また、フロア内のあちこちに立ち話ができるオープンテーブルを配置し、コピー機などのOA機器を一箇所にまとめたマグネットスペースを作ることで、社員同士が頻繁に顔を合わせる空間を作り出している。
「移転後しばらく経ってから気が付いたのは、"以前よりも電話が鳴らなくなったな"ということですね。社員全員に社内用のPHSを支給しているんですが、その着信音があまり聴こえなくなった。これまで内線やメールで連絡しあっていた社員たちが、直接顔を合わせて話すようになったからです。同じフロアにいるわけだから、いちいち電話するより会いに行った方が効率的ですよね。部署内外のミーティングの活発化に、2フロア化とオープンテーブルの配置はかなり効果的だったと感じます」(松本常務)
新薬開発のスピードを
加速させる効率化
部署間コミュニケーションの増大は、販売需要に応じた生産量の管理といった日々の業務に効率化をもたらしている一方で、実は製薬メーカーにとって最も重要度の高いミッションである「新薬開発」にも大きな影響を及ぼしているのだという。
「実際の開発業務は創薬本部の社員たちが担当しますが、『一体どんな新薬を作るべきか』というアイデアの種は、どこに転がっているか分からない。オフィスにこもっているだけでは市場のニーズはなかなか見えてきません。その一方で、医薬営業本部の人たちは、エリアとプロダクトをマトリックスした政策展開を推進していくわけですが、この両者が部署を超えて気軽に情報共有することで、ちょっとした雑談から新しい薬のアイデアが生まれることも十分ありえるわけです」(松本常務)
価値ある新薬を一日も早く上市させることは、医薬品メーカーの生命線ともいえる。市場ニーズを正確に把握し、スピード感のある創薬につなげるという効率的なサイクルを作り出すために、社員同士のネットワークの充実はきわめて重要な価値を持っているわけだ。
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