2015年1月の相続増税を機に、相続や事業承継に関する知識を持つ人が増えた。ところが、相続対策はまさにケース・バイ・ケース。一般には複雑で難しいところもある相続について、分かりやすく書いたベストセラー『磯野家の相続』シリーズの著者・長谷川裕雅弁護士に話を聞いた。

相続・相続税の知識はあっても、簡単ではない具体策の実行

hasegawa長谷川 裕雅 弁護士・税理士
はせがわ・ひろまさ/1975年生まれ。相続弁護士・東京法律事務所代表弁護士。税理士。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社入社。同社記者を経て弁護士に転身する。弁護士と税理士の両資格を保有し、相続問題を総合的に解決できる数少ない専門家として、相談者から絶大な信頼を得ている。相続問題を題材にしてベストセラーとなった『磯野家の相続』のシリーズ最新版、『磯野家の相続税』を上梓。

──相続の発生から相続税の納付期限まで、意外に時間がないと聞きます。

長谷川 相続が開始してから、10カ月以内に相続税の申告や納付を済ませなければなりません。このためには、相続人を確定し、相続財産の現状を把握するなどの確認作業が必要。例えば、戸籍などをたどって法定相続人を確認したり、株式や不動産などを正確に評価します。

 さらに財産の分け方を相続人で協議し決定して書面を作成し、相続税の申告書を提出しなくてはなりません。相続に関してやらなければならないことを挙げていくだけで、10カ月という期間が決して長くないことがお分かりいただけると思います。

──相続税の納付期限に間に合わなければ、ペナルティが科されるのですか?

長谷川 相続税の納付期限の翌日から延滞税が掛かります。また財産の分け方が決まらなければ、配偶者控除などを利用できません。小規模宅地等の特例による優遇も受けられなくなることがあります。