2016年1月からいよいよマイナンバー制度がスタートする。これによって、企業は究極の個人情報を管理することになり、事務負担や漏えいリスクが重くのしかかる。特に会計・税務を税理士に頼っている多くの中小事業者にとっては、マイナンバー時代に本当に頼れる税理士を見極めることが、リスク回避を含めて非常に重要になる。
(取材・文/ダイヤモンドIT&ビジネス 撮影/平野晋子)
マイナンバーの取得・管理は
大きなリスクが伴う
――国民一人ひとりに12ケタの個人番号を割り当てる「マイナンバー(社会保障・税番号)」制度の導入が迫っています。マイナンバーを取り扱うのは行政だけではなく、民間企業も従業員やその家族のマイナンバーを把握して、雇用保険や社会保険、税務申告書類などに記載する必要があります。どうやって準備すればいいのでしょうか。
本郷 マイナンバー制度について中小企業経営者がどこまで理解しているかはわかりませんが、マイナンバーを取り扱うことは大きな責任と負担を伴うことは間違いありません。
私は「ビジネスの世界は一夜城の時代になった」とよく言っているのですが、M&A(買収・合併)を成功させてあっという間に巨大企業が誕生する時代です。
一方で、一夜で城ができることもあれば、一夜にして崩れることもある。例えば、危機管理やマスコミ対応が悪いだけでも、企業が存亡に危機に立たされてしまいます。
教育サービス関係の大企業が個人情報の漏えいがきっかけで巨額の赤字計上を余儀なくされたのは記憶に新しいところですが、マイナンバーを取得・管理する企業はすべて同様のリスクにさらされるということです。
顧問先企業のマイナンバーを大量に取り扱うことになる会計事務所などは、リスクと責任が一層重くなると覚悟したほうがいいでしょう。
対応策として、会計事務所は今後、紙をなくすべきだと思います。書類をカバンに入れて会社から持ち出されたら、悪意はなくてもカバンごと電車に置き忘れたりするリスクは防げません。
紙を減らすには、半ば強制的にやるしかないと思います。経費申請ひとつにしても、システムへの入力だけにして、申請書類を廃止するとか、報告書などもすべて電子書類としてサーバーに保管してみんなで共有できる状態にしなければならないルールにするとか。その上で、ルールを守らない人は人事評価がマイナスになる仕組みを作る。外資系企業などを見ていると、トップダウンで強制することでルールを徹底しているところが多いですね。日本企業はそれが苦手ですが。