先進的な税理士や会計事務所はそういう対応をし始めていますが、一般的にはマイナンバー対応を含めて具体的にどうするか、まだわかっていないところの方が多いのではないでしょうか。
いずれにしろ、IT環境がしっかりしていない会計事務所と付き合うのはよく考えた方がいい。セキュリティの問題も含めて、IT環境がしっかりと整備されている会計事務所を選ばないと、企業側のリスクも増えます。
――マイナンバーを取り扱う場合、一般企業であれ会計事務所であれ個人情報保護法に基づく義務・責任を負うことになります。個人情報の漏えいがないよう厳密に保管・管理しなければならず、そのための組織体制、社員教育、物理的な安全性確保、システム上のセキュリティ対策などの必要な対応は多岐に渡ります。
本郷 会計事務所としての立場で言えば、現実的な問題として会計・税務などのシステムをクラウド化するしかないでしょうね。
そうすれば、個人情報を金庫に保管するといった物理的な安全対策は必要ないし、システム上のセキュリティ対策を自社で行う必要もなくなります。
ただ、運用面で難しいのは、長年使い慣れたシステムも使い続けたい、新しいシステムの使い方を今さら覚えるのは面倒だといった拒否反応を示す人が少なからずいることです。
会計事務所で働く会計士や税理士は、職人肌の人も多いので一層大変です。私は2008年頃からクラウド化を進めるように会社では指示してきました。当時は、クラウドで使い勝手のいいシステムがまだありませんでしたし、会社のシステムを一気にクラウドに移行するのも現実的ではないので、新しく立ち上げた部門などから徐々に移行しています。
東日本大震災では会社の経理書類が津波で全部流されて、税務申告ができなくなった企業もありました。クラウドでデータを保存しておけば、そうした心配はありません。
BCP(事業継続計画)の点から言っても、事業会社も会計事務所もクラウド化を急ぐ必要があるのではないでしょうか。