経営者は、だれの話を
しっかり聞くべきか

――マイナンバー制度をきっかけとして、企業と会計事務所の関係は従来以上に深まることになりそうですが、財務・会計のプロであり、顧問先への関与を通じて経営全般にも明るい税理士や会計士をもっとうまく活用することを中小企業経営者は考えていいのではないでしょうか。

本郷 経営者は外に出ないとだめで、税理士や会計士に限らず外部の人の話を聞いたほうがいい。私も外部の人と話をしていて、ちょっとしたひと言でビジネスのヒントをもらうことがたくさんあります。いつも忙しい、忙しいと言いながら会社にずっといて、宅配便の受け取りのハンコまで自分で押しているような社長がいますが、そういう会社はあまり伸びないでしょうね。

 相手が若くても参考になる話にはきちんと耳を傾け、素直に聞き入れる、そういう姿勢が経営者には大事だと思います。

 一方で、コンサルタントとかエコノミストといった人たちが、「10年先はこうなる」というような話をしているときは、あまり真に受ける必要はありません。今の時代、10年後はどうなっているかなんて、だれにも分かりませんから。

 会計事務所の世界について言えば、顧問料と決算報酬だけに頼っていると今後は収益が上がらなくなります。会計・財務システムがどんどん便利になり、価格も安くなっていくと税務申告や決算処理にかかるコストも安くなり、会計事務所の収益は低下するからです。

 どんな業種でもそうですが、新しいビジネスを始める場合に一番成功の確率が高いのは、本業に軸足を置きながら、もう片方の足を隣地に踏み出す、あるいは隣接異業種に進出していくやり方です。

 私はこれを「ピボット経営」と呼んでいますが、会計事務所でいえば、人事・給与計算のアウトソーシングを受けるとか、ITコンサルティング、ビジネスコンサルティングへと事業領域を広げていくという進め方になります。

 こうして周辺業務を広げていく際に決め手となるのは顧客数です。顧客ベースが少ないと事業を広げようがないからです。ですから、規模を求める会計事務所同士の再編が今後は活発になるでしょうね。

 税理士が一人でやっているより、多くの税理士が情報を共有しあっている方が、的確なアドバイスができる確率も高くなりますし、大きい事務所がワンストップでいろいろなニーズに応える時代になってきます。

 経営者が会計事務所を選ぶ際には、そうした視点も持っておいた方がいいと思います。

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