HIT+IT=BPRの
最適効果を海外現法で実現

 八千代工業の取り組みで特筆すべきは、HIT法の活動とITを結びつけたBPRを推し進めている点にある。特に海外の現地法人でのBPR推進にHIT法がもたらした効果は抜群のものだった。

タイのサイアム ヤチヨ カンパニー リミテッド

 海外現法では、安定した品質を確保するための作業員の熟練度向上が大きな課題だ。日本人のベテランスタッフが手取り足取り教えながらリーダー格の人材を育て、そこから技能を広げていくのが一般的だ。八千代工業でも、基本的に変わりはない。

 しかし、大きく異なることがある。海外の管理部門でもHIT法による作業分解がなされ、最も短時間で最高品質を実現できる作業員の動きを「チャンピオンタイム」と定めて、全員がそれを目指す。その際、チャンピオンタイムをベースにした「標準作業フロー」をつくり、それと各種のIT管理システムをリンクさせることで作業内容が「見やすく・分かりやすく・正確さを担保できる」ようにしている。

「実はHIT法とITの結合によるBPRは、海外現法から試行しました。日本から持ってきたソフトウェアを現法で一から使い始めるとなると現法ではどうしてもやらされ感を感じてしまいます。ですので、あらかじめ日本の業務フローをHIT法により現法向けに標準化したフローをつくり、そのフローと現法フローとを突き合わせるという方法で導入を図りました。そうすればすぐにギャップが明らかになり、効果の予測と改善ポイントの提案ができ、また現法では日本ほど複雑な業務フローは必要ないということも分かります」(小島部長)。

 具体的には中国やタイの現法では、業務用のパッケージソフトにHIT法により明らかになった標準フローを組み込み、さらに現地特有の課題に対しては一部をローカライズ(アドオン)して完成させた。

「ソフト開発に掛かった費用はそれぞれ2000万円程度。むしろHIT法を北米現地法人に展開する際に、正しく英訳する作業に苦労した」(小島部長)。

 同時にHIT法とITの連動には、いくつかの課題があることも分かってきた。

 例えばイレギュラーな作業についての分解チェックは見落とされがちだ。また、作業そのものがすでにシステムで回っている場合、それ自体がブラックボックス化しており、それを見落とすとHIT法ベースのシステム開発において、機能が欠落したり、開発作業の手戻りが発生する可能性があると分かった。

 八千代工業は、HIT法そのものと、HIT法とITを結合したBPRについてシステム科学と全面提携して製造業向けを中心にしたコンサルティング活動を始めている。自身のものづくりの現場でのHIT法の定着や改善活動のノウハウを広く世に普及させるためだ。