ルーティン作業の可視化から
思考作業の可視化へ

小島部長(左)は「システム屋ではなくコンサルになれ」と、太田常務は「人材能力2倍×組織能力2倍=4倍の組織力を実現する」ことを加藤元社長から厳命された

 八千代工業の太田常務と小島部長にはそれぞれ、取り組みを開始した当時、加藤元社長から厳命されたことがあるという。

 まず小島部長は、「システム屋ではなくコンサルになれ。現場から言われたことをシステムという形にするのではなく、仕事や業務に精通し、理想化するためのシステムをつくれるようにならなければならない」と命じられた。

 それはつまり、「従業員が使えるシステム」の実現だ。導入されたシステムのやり方に仕事を合わせていくのも一つの手法だが、それでは真の意味で業務を精査したり、効率性を高めたりすることはできない。なによりも創造的なものにならない、と言うのである。

「システム屋としてはHIT法とITの結合によるBPRの実現は当初からの目標でしたが、さまざまな従業員の仕事にどう貢献できるかの道標、糸口となったのがHIT法でした。私自身の視点が変わりました。かつてIT担当者は、現場にヒアリングしながらシステムを組んでいましたが、今は、HIT法で分解され可視化された業務が見えるのだから現場とのコミュニケーションも実にスムーズ。これはシステムの総コスト抑制にも大きな効果をもたらしている」(小島部長)。

 一方、太田常務へ加藤元社長は、「人材能力2倍×組織能力2倍=組織力4倍を実現すること」を厳命した。

 すでにマネジメント層を中心に変革の意識付けはできた。また、HIT法を駆使して不断に業務を見直していくのが仕事だと教えられた“HIT法ネーティブ”の若い社員も増えている。「業務改善の効果により組織強化が加速していくだろう。人材育成では、2倍のスピードで育成し、その能力を適材適所で発揮させるか。スピード感を失うと厳命を実現できない」と語る。

 その上で、「八千代工業規模の会社では、変化に対して常に多能的な対応が求められる。それが多能職化であり、多能職化が常態化することで“最少人数で最強の組織を生み出す”ことができる。今後は、HIT法を思考業務にも利活用できないかと考えている。例えば、各種の基礎資料がどこから引用されたものかが簡単に共有でき、さらにあそこになら情報があると目星を付けられる。ルーティン作業のムダ取りから思考作業の充実へとHIT法を進化させたい」と語る。